万国漢字志

都市篇 · モーリタニア

万国漢字志 都市篇 第三十号|ロッソ――川向こうの同名都市と分ける

ロッソはトラルザ州の州都で、セネガル川に面するモーリタニア・セネガル国境の都市である。2023年都市人口は4万2,670人。

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二字の「羅索」を採る

都市篇第三十号は、モーリタニア南西部の国境都市ロッソです。

国連難民高等弁務官事務所の香港サイトは、モーリタニアへ帰還した難民を扱う記事で、この都市を繁体字の羅索(Rosso)と記しています。国名と欧文名を伴う、対象都市への直接用例です。

在モーリタニア中国大使館経済商務処の公的ページと、同大使館本体サイトの記事にも、簡体字の罗索がそれぞれ確認できます。繁体字と簡体字の対応も明瞭です。

今回は、国連難民高等弁務官事務所が直接用いる二字の繁体字形を、暫定制定都市名に採ります。


日本語では「ロッソ」

日本の外務省は、モーリタニアへの政府開発援助案件でロッソ市と記しています。国際協力機構の報告書も、主要都市名の一つとしてロッソを掲げています。

本稿と公式サイトでは、この公的な日本語用例に従ってロッソを現代日本語名とします。

国立国会図書館サーチの書誌情報を「ロッソ」「羅索」で検索しましたが、モーリタニアの都市を日本語で羅索と記した歴史資料は確認できませんでした。検索結果だけで不存在を証明することはできないため、古地図、新聞、地理書、外交資料の調査は継続します。


中国語圏の「罗索」と「羅索」

在モーリタニア中国大使館経済商務処による2025年の記事は、モーリタニア南部トラルザ州の罗索市で進む事業を紹介しています。同大使館本体サイトも、国境交通や農業を説明する記事で罗索を使っています。経済商務処のページと大使館本体サイトという別々の公的ページに、対象都市への直接用例があります。

ここで罗索市は、都市名の罗索に行政区分を表す一般名詞の市を添えた形です。見かけは三字ですが、Rossoを三字で写した都市名ではありません。制定候補として比較する単位は二字の罗索です。

国連難民高等弁務官事務所の香港サイトは、繁体字で羅索(Rosso)と直接記しています。本稿は簡体字形を機械的に置き換えて作るのではなく、この繁体字の直接用例を根拠に二字形を採ります。


セネガル側の同名都市と分ける

本稿の対象は、モーリタニアのロッソです。GeoNamesのRosso(ID 2376898)が示す地点は北緯16.513783度、西経15.805035度で、セネガル川の北岸にあります。

川の南岸、セネガル側にもRossoという別の地点があります。GeoNamesではID 2246522として登録されており、モーリタニア側とは別項目です。

両者は渡河地点を挟んで向かい合いますが、国も地点識別子も異なります。人口、座標、州都という説明は、すべてモーリタニア側のロッソに対応させます。


台湾外交部の「羅梭」は別の都市

中華民国外交部は、カリブ海のドミニカ国の首都Roseauを羅梭と記しています。欧文名も国も異なり、モーリタニアのRossoを指す資料ではありません。

羅索と羅梭は第一字が同じ二字形ですが、字面の近さだけで同一視できません。本稿では、Rossoに直接結び付く羅索を採り、Roseauの羅梭を候補に含めません。


トラルザ州都とセネガル川

モーリタニア大統領府は、ロッソをトラルザ州の州都と記しています。市街地はセネガル川の北岸にあり、対岸のセネガルと結ばれる国境都市です。

国連難民高等弁務官事務所の記事は、帰還者がセネガル側からフェリーで川を渡り、モーリタニアのロッソへ到着した経路を記録しています。モーリタニア首相府も、長年にわたってロッソの渡船が両岸の人と貨物を運んできたと説明しています。

両岸を結ぶロッソ橋は建設事業が進行中です。2025年の在モーリタニア中国大使館経済商務処の記事は橋の工事現場を、欧州連合の対外活動庁はセネガル川両岸を結ぶ建設事業を紹介しています。2026年のモーリタニア・セネガル共同発表も、ロッソ橋事業の進捗に言及しています。完工済みの施設とは扱いません。

ロッソは通過点だけではありません。在モーリタニア中国大使館は周辺を高粱やトウモロコシに適した主要食料生産地と説明し、モーリタニア通信社もセネガル川から引く灌漑水路と農地整備を報じています。川、渡船、建設中の橋、農業が都市の位置づけを形づくっています。


2023年都市人口は4万2,670人

モーリタニア国家統計・人口経済分析庁ANSADEの2023年国勢調査総合報告書は、主要都市の比較表でロッソの人口を4万2,670人と記しています。本稿と公式サイトでは、この都市人口を採ります。

同じ報告書には、ロッソ・コミューンの人口6万1,156人と、ロッソ・ムカタア(県)の人口7万403人も掲載されています。三つの数字は集計範囲が異なります。

4万2,670人は都市、6万1,156人はコミューン、7万403人はムカタア(県)です。より大きな行政区域の数字を市街地人口へ置き換えません。


国の首都ではない

日本の外務省がモーリタニアの首都として掲げるのはヌアクショットです。ロッソはトラルザ州の州都ですが、国家の政治上の首都ではありません。

州都と国の首都は別の区分です。公式サイトでは、ロッソを非首都として表示します。


命名者は確定できない

今回確認した資料からは、Rossoという都市名を最初に付けた人物を特定できませんでした。

また、漢字形の羅索または罗索を最初に選んだ人物も確認できません。国連難民高等弁務官事務所、在モーリタニア中国大使館経済商務処のページ、同大使館本体サイトに用例はありますが、掲載組織をそのまま表記の考案者とはみなしません。

都市名の命名者と漢字形の考案者は別の問いです。どちらも根拠資料が見つかるまでは未確定とします。


三つの表記を分ける

羅索

国連難民高等弁務官事務所の香港サイトが、モーリタニアのRossoへ直接用いる繁体字形です。

暫定制定都市名に採ります。

罗索

在モーリタニア中国大使館経済商務処のページと同大使館本体サイトが、対象都市へ直接用いる簡体字形です。

羅索に対応する公的な中国大陸表記として保存します。

羅梭

中華民国外交部がドミニカ国の首都Roseauへ用いる表記です。

対象都市が異なるため、ロッソの候補には採りません。


万国漢字志への取り込み

暫定制定都市名には、二字の羅索を採ります。

根拠は、国連難民高等弁務官事務所の香港サイトがモーリタニアのRossoへ繁体字の羅索を直接用い、在モーリタニア中国大使館経済商務処のページと同大使館本体サイトにも対応する簡体字の罗索が確認できることです。文字の追加や削除は行いません。

制定区分を創とするのは、日本語史料上の漢字形を継承するのではなく、中国語圏で実際に使われる表記を現代日本語の都市索引へ新たに取り込むためです。羅と索の文字を本稿で新造した、という意味ではありません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ロッソ

所在地

モーリタニア

国連難民高等弁務官事務所で確認した漢字形

羅索

暫定制定都市名

羅索――創

制定状態

暫定制定・日本語原典継続調査


採らなかった表記と未解決点

罗索市は、二字の都市名に一般名詞の市を添えた形であり、三字の都市名とは扱いません。

羅梭は、中華民国外交部がドミニカ国のRoseauへ用いる表記です。モーリタニアのRossoとは対象が異なるため採りません。

未解決点は、日本語史料における歴史的漢字表記、Rossoという都市名の命名者、羅索または罗索という漢字形を最初に選んだ人物です。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第三十一号

次は、サン=ルイです。

セネガル川を渡り、かつてモーリタニア行政の中心でもあった都市の漢字表記と命名記録を調べます。