月曜日に開く市場
INSEED『中央州統計年鑑2022–2023』の印刷49頁、表1-52には、モ県の市場と開催曜日が並んでいます。Saiboudèは月曜日、Tindjassiは火曜日、Djarkpangaは水曜日。前二号で取り上げた町から、今度は市場の曜日を手掛かりに隣の名前へ進みます。
今回取り上げるのは、アクセント記号を含む公的綴りではSaïboudèという集落です。本誌の日本語索引名は暫定的にサイブデ、漢字案は賽武弟とします。どちらも日本語で定着した名前を採録したという意味ではありません。
前号が残したもう一つの候補、Gbalédjéは、観光省の2021年12月30日付記事では滝の整備調査に現れます。Saïboudèなら、前号と同じ自治体の資料を起点に、集落名、小郡名、市場名を照合できます。今回はこの史料上のつながりを優先しました。人口の大小や表の並びだけによる選定ではありません。
歴史表記|官報の管轄欄にある名前
2018年1月8日付トーゴ共和国官報、印刷8頁には、2017年12月20日付政令第2017-141/PR号があります。Mô 2の管轄欄はTindjassi、Saïboudè、小郡数は02、中心地はTindjassiです。
ここでSaïboudèが表すのは自治体を構成する小郡です。二つの小郡の名前が並ぶからといって、自治体の中心地も二つあるわけではありません。また、この政令の日付は集落の創建年でも、Saïboudèという地名の初出年でもありません。
日本語の歴史的漢字形、地名の初出と命名者は、今回確認できませんでした。官報の欧文用例は、所在地と綴りを確かめる資料として記録します。
小郡名と集落名を別々の欄で読む
Mô 2自治体の公式紹介は、自治体内の22村を列挙し、その中にSaïboudèを含めています。官報の小郡名に加えて、集落名としての用例も確認できます。都市篇で取り上げますが、行政上の独立した市と認定するものではありません。
ANIDの中央州登録拠点一覧には、MÔ/MÔ 2/SAIBOUDE/SAIBOUDEという行があり、施設欄にEPP SAIBOUDEなどが挙がっています。同じ小郡欄の下でも、KOUIDA、MAKOUWI、TCHATCHAKOUなどは別の集落欄に置かれています。
この区別は人口を読むときにも必要です。同じ名を持つ集落があることと、その名の小郡全域の住民が一つの市街地に暮らすことは、同じではありません。登録拠点の一覧自体も、行政境界を示す地図としては使いません。
市場の曜日が残す接点
年鑑の表1-52は、Saiboudèの市場にLundiと記しています。資料が記録する月曜日という曜日を、そのまま採録します。2026年の毎週の開催状況を現地で確認したわけではありません。
前号のTindjassiと前々号のDjarkpangaも同じ表に載っています。市場が異なる曜日に開くことは読めますが、同じ商人が三か所を巡回することや、月曜から水曜へ商品が順に運ばれることまでは、この表には書かれていません。
短い統計表でも、地名どうしの接点は見つかります。その接点から人の移動まで語りたくなりますが、取引や交通の実態を確かめるには別の資料が必要です。
日本語・中国語形と、綴りからの転写
官報と自治体紹介はSaïboudè、登録拠点一覧は大文字のSAIBOUDE、市場表はSaiboudèを使います。記号の有無を含めて、資料ごとの綴りを残します。
今回の探索では、この集落に直接対応する公的な日本語カタカナ形、日本語歴史漢字形、中国語圏の公的漢字形は確認できませんでした。検索で見つからなかったことを、先例が存在しない証明にはしません。
本誌のサイブデは、綴りのSaï・bou・dèを、サイ・ブ・デに近似させた暫定転写です。ïを含む母音の分かれ方、末尾èの母音の質、強勢や声調を音源で確認した結果ではありません。地名全体の現地音源は未取得・未聴取です。
サイブデとサイブーデの比較も残りますが、bouという綴りだけで長母音を認定せず、今回の索引名には長音符を置きません。現地音を得た後には、カタカナと漢字案を一緒に見直します。
二字・三字の比較
賽弟
二字に縮める案です。しかし、サイとデだけを目印にすると、中間のブを落とします。二字という形式を満たすために、この部分を省く案は採りません。
賽武泥
サイ・ブ・デに対応する三字を探す案ですが、泥の字音はデイです。今回のデに対して余分な母音を含みます。泥の字義を土地の地質や市場の様子へ結び付ける根拠もありません。
才武弟
同じサイを才にする三字案です。音の目印を三つとも残せる点では候補になります。才と賽のどちらが現地音を正しく表すかという優劣を、今回の資料から認定することはできません。
賽武弟
賽のサイ、武のブ、弟のデを目印にします。弟にはテイ・ダイという字音もあるため、全体にサイブデという指定読みを添えます。
今回はこの三字を採ります。賽と才の選択は本誌の編集上の暫定判断です。賽の祭祀、武の軍事、弟の親族関係から、町の宗教・歴史・語源を説明するものではありません。字音の辞典は地名の先行用例ではなく、この組合せの区分は創です。
人口の範囲と地図の異綴り
同じ年鑑の印刷53頁、表2-5では、2022年国勢調査に基づくSaïboudè小郡の人口が、男性3,850人、女性3,846人、計7,696人です。Tindjassi小郡の14,230人との合計は、Mô 2自治体の21,926人と一致します。
本稿の人口欄は同名小郡全域を対象とします。集落単独の人口や市街地人口として7,696人を使うことはしません。
位置にはOpenStreetMapのSaïbou、北緯8.6067389度・東経0.4731508度を暫定的な索引点として置きます。原データは集落を示す点ですが、名前が官報のSaïboudèと完全には一致しません。この地図点と公的資料の集落との対応は未確定であり、公式な中心座標や小郡境界としては使えません。異綴りを黙って統合せず、自治体地図との照合を課題として残します。
外務省の基礎データが示すトーゴの首都はロメです。本稿の対象はMô 2自治体内の集落です。
万国漢字志の暫定案
暫定日本語都市名
サイブデ
原綴り・所属国
Saïboudè/トーゴ
暫定制定都市名
賽武弟
指定読み
サイブデ
制定区分
賽武弟――創
制定状態
暫定制定・原典継続調査
採らなかった表記と未解決点
賽弟は中間の省略、賽武泥は末尾の字音との差を理由に採りません。才武弟は同音字を使う比較案として残します。先例未確認だけを理由に提案を止めず、公的綴りと本誌の選字を区別して記録します。
現地音、日本語・中国語圏の先行形、命名者、集落単独の人口、Saïbouという地図点との対応は継続調査です。特に地図上の索引点は暫定であり、人口の範囲もその点の周辺市街地と一致するとは限りません。
参考資料
- INSEED『中央州統計年鑑2022–2023』。印刷49頁・表1-52、市場と曜日。印刷53頁・表2-5、小郡人口。両原頁確認。
- 2018年1月8日付トーゴ共和国官報。印刷8頁、政令2017-141/PR。原頁確認。
- Mô 2自治体「Présentation」。村名一覧。
- ANID「List of Centrale Registration」。小郡と集落の欄。
- 観光省、Kpètè BènaとGbalédjéの滝の調査、2021年12月30日。候補比較。
- OpenStreetMap、ノード442169401。Saïbouの暫定索引点。© OpenStreetMap contributors、ODbL。
- 漢字ペディア「賽」「武」「弟」「泥」。字音の根拠。
- 外務省「トーゴ共和国基礎データ」。
(2026年10月17日調査。現地音源未聴取。)
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。
都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。
次回予告|都市篇 第百二十二号
市場表にあるBoulohouと、観光資料から残したGbalédjéを比較します。前者は市場名と小郡名、後者は滝と集落名の対応を確かめ、史料が何を指すかを優先して次の一都市を選びます。
