万国漢字志

都市篇 · フランス

万国漢字志 都市篇 第百八十四号|サン・ドニ――王の墓所から同名の町を見分ける――

現代日本語と中国語の都市名用例を照合し、聖德尼を改として暫定採用する。人口は2023年基準・2025年境界・2026年発効の自治体人口。日本語の歴史的漢字表記は未確認。

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王の墓所が教えてくれる場所

サン・ドニという名前だけでは、どこの町か決まりません。すでに取り上げたレユニオン島の町と、今回のパリ北郊の町は、欧文では同じSaint-Denisです。

中国語の論文で今回の町を見分ける手がかりになったのは、王室安葬的圣德尼という一節でした。フランスの王権と都市を論じる文章の中で、王室の埋葬に結び付けて挙げられています。

本稿ではこの現代中国語の用例に基づき、字形を調整した聖德尼を暫定案とします。同名の町の資料から漢字だけを借りることはしません。


歴史表記

日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 今回確認した中国語論文は中世の都市を主題にしていますが、2019年の研究論文であって、中世当時の漢字表記を伝える同時代原典ではありません。

したがって、論文中の圣德尼は現代の既存用例として扱います。日本語の古い用例、最初の使用者や選字者は要継続調査です。歴史を扱う文章にある、という理由だけで制定区分を「史」にはしません。


日本語での用例

フランス観光開発機構France.frの「パリ/サン・ドニ ラグビーワールドカップ2023サポーターガイド」は、スタッド・ド・フランスへの案内や市内観光の本文でサン・ドニと記しています。

観光の節では、歴代国王の墓所を持つ町として紹介しています。パリ周辺という位置と、墓所のある町という文脈をともに確認できるため、レユニオン島の同名都市と区別できます。

現代日本語名はサン・ドニとします。この大会向け案内の交通・営業情報を、現在も有効な案内として転載するものではありません。また、日本語の呼び方の確認と、2025年に変わった自治体の範囲の確認は分けて行います。


中国語圏その他の表記との比較

朱明の「中世纪晚期法国国家构建中的城市」は、『華東師範大学学報(哲学社会科学版)』2019年第5号、214〜223頁に掲載された論文です。

国家の空間的統合を論じる本文では、王の戴冠と結び付くランスに続き、王室の埋葬と結び付く都市として圣德尼を挙げています。建物名だけから所在地を推測するのでなく、都市を論じる列挙の中にある三字を根拠にします。

本誌の案では圣を聖に改め、德と尼を保持します。資料の実際の字形は圣德尼であり、聖德尼という字形そのものを同論文で確認したとは説明しません。

レユニオン島を扱う前号までの資料で確認した別の漢字形は、この本土の町の使用例を証明しません。同名であることと、漢字用例の対象が同じであることは別です。


二文字・三文字案の比較

德尼

二字にする本誌の比較案です。ただし、資料の圣德尼から先頭の一字を落とすことになります。短くするために既存の名前の一部を消す根拠は、今回確認できていません。

圣德尼

論文で確認した三字をそのまま採る案です。出典の字形に最も忠実であり、比較の基準になります。

聖德尼

圣だけを聖に調整する三字案です。既存の文字の並びを保ちつつ、日本語の漢字表記として用いるための変更を明示できます。本稿ではこれを選びます。德を徳へさらに置き換えることはせず、資料の字形を残します。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

サン・ドニ(パリ北郊)

所属国

フランス

原資料で確認した現代中国語表記

圣德尼

暫定制定都市名

聖德尼――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

既存の圣德尼を根拠とし、圣を聖へ調整するため、区分は「改」です。日本語での伝統的な漢字名を認定したものでも、現地発音を新たに漢字で再現したものでもありません。

人口はINSEEの2023年基準で149,077人。ただし、これは2025年1月1日の境界による新しいサン・ドニ自治体全体の値です。INSEEの説明では、この日に旧サン・ドニとピエールフィット=シュル=セーヌが新自治体になっています。

2023年の人口であっても、範囲は2023年当時の旧自治体だけとは限りません。この値には合併後の範囲が含まれるため、ピエールフィットを別に足しません。パリ都市圏の合算人口でも、レユニオン島のサン・ドニの人口でもありません。人口の版は2026年1月1日発効です。


採らなかった表記と未解決点

德尼は省略を加えた比較案として残し、採りません。圣德尼は出典の字形として示し、本誌の制定案とは変更箇所を分けます。レユニオン島の都市に用いた漢字は、本土の用例の根拠にはしません。

日本語の歴史的漢字名、中国語での初出や選字者、地域ごとの異表記は継続調査です。2019年の論文が指す歴史的な町と、2025年境界の新自治体の全域も同一の範囲ではありません。論文は名称の使用例、INSEEは現在の統計範囲の根拠として、それぞれ参照します。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第百八十五号

次は、確認済みの人口基準の掲載順に従い、**クレルモン=フェラン(Clermont-Ferrand)**を取り上げる予定です。長い漢字名を、二字や三字へ縮めるべきか考えます。