学校の住所に残る、町の四字
台湾教育部の外国大学参考名冊を開くと、フランスの建築学校や美術・デザイン学校の行に、聖艾蒂安という地名が繰り返し現れます。その隣にはSaint-Etienne、住所にもSaint-Étienne。漢字と欧文の対応を、実務的な一覧の中で確かめられます。
日本語では、フランス観光開発機構の資料がサン・テティエンヌと記しています。本稿はこの日本語名と漢字の四字を組にし、聖艾蒂安を暫定採用します。二文字・三文字を標準とする本誌でも、確認した全形を削る理由がない場合は、そのまま残します。
歴史表記
日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 古い地理書や地図などで、聖艾蒂安の用字、日本語の読み、Saint-Étienneとの対応を揃えて確認したとは言えません。漢字名の初出・選字者も未確定です。
今回の根拠は、観光資料、大学の交流記事、政府の学校参考名冊という現代の資料です。学校の創立が古いことや、資料が町の歴史を扱うことを、そのまま漢字名の古さへ結び付けません。
日本語の歴史表記が未確認であることだけを理由に採用を止めるのではなく、現用形として確かめた範囲を示します。
日本語での用例
フランス観光開発機構の都市紹介PDFの第1頁には、サン・テティエンヌ SAINT-ETIENNEという見出しがあります。本文でも同じ日本語名が使われ、町の紹介からデザイン関連施設の説明へ続きます。本稿の現代日本語名は、この用例に従います。
この資料は2014〜2016年の催しを扱う観光案内であり、開催予定や施設案内を現在の情報として再掲するためには使いません。ここで確かめたいのは、日本語の用字と欧文の対応です。
聖・艾・蒂・安を日本語の音訓だけで読むと、サン・テティエンヌの音にそのまま重なるわけではありません。漢字名全体と現代日本語名を対応させます。綴りだけから現地の発音を確定せず、現地話者の音声も今回は未確認です。
中国語圏その他の表記との比較
台湾教育部の『外國大學參考名冊・歐洲地區』では、PDF第57頁、フランス部分の印刷頁7の地域欄に**聖艾蒂安(Saint-Etienne)**が現れます。建築学校、演劇学校、美術・デザイン学校、ENISEの四行で対応を確認できます。
これは学校名の翻訳だけから都市名を切り出した判断ではありません。表には学校の原語名とは別に地域欄があり、住所にもSaint-Étienneが記されています。ただし、この名冊が示す地域名を、そのまま統計上の自治体境界の証明には使いません。
中国大陸側では、北京大学工学院の2015年5月11日付の来訪記事が、本文に圣艾蒂安を含む学校名と、Ecole Nationale Supérieure des Mines de Saint Etienneを並記しています。今回確かめた大陸側の用字は圣艾蒂安、台湾側の地域名は聖艾蒂安です。
両者は現代中国語圏の実際の使用形です。政府や大学が用いていることと、日本語の伝統的表記であることは分けて考えます。
二文字・三文字案の比較
聖艾蒂安
台湾の名冊の地域欄にある四字の全形です。欧文と住所を伴う用例があり、制定区分は既とします。四字を保つのは、確認した地名を途中で切らないためです。
艾蒂安
三文字にするため先頭の聖を外した、本誌の比較形です。しかし、照合した名冊の地名は四字であり、この三字では全形と一致しません。Saint-を含む対象の名称を短くする根拠を、今回の資料からは得られません。採用しません。
聖安
二文字に圧縮した本誌の比較形です。書く長さは減りますが、確認した四字のうち二字を失い、資料との照合が難しくなります。既存の都市名としての用例は今回確認していません。
字数を揃えることより、資料で確認した名前との対応を優先します。圣艾蒂安は、実際に確認した簡体字の対応形として併記します。
173,136人の自治体を対象にする
INSEEのSaint-Étienne、自治体コード42218の人口表では、population municipaleは173,136人です。別計上人口1,562人を含むpopulation totaleは174,698人ですが、本稿が採るのは前者です。
対象版の説明に従い、人口基準日は2023年1月1日、自治体境界は2025年1月1日、発効日は2026年1月1日と区別します。2026年の推計人口ではありません。
人口の範囲はSaint-Étienneというcommune全体です。観光案内に登場する周辺の町や、広域行政組織、連続市街地・都市圏を加えた数字ではありません。学校参考名冊の地域欄も、人口集計の範囲を決める資料の代わりにはしません。内包する地区を別都市として重ねて数えることも避けます。
フランスの国家首都は外務省の基礎データでパリと確認できます。サン・テティエンヌは、現在の国家首都には区分しません。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
サン・テティエンヌ
所属国
フランス
暫定制定都市名
聖艾蒂安――既
制定状態
暫定制定・原典継続調査
二文字・三文字の標準に対する例外として、四字の全形を採ります。既存の現代中国語名を採用する提案であり、日本語の公定名を変更するものではありません。
採らなかった表記と未解決点
艾蒂安・聖安は、字数を減らした場合に何が失われるかを考える比較形に留めます。調査済みの歴史表記としては扱いません。圣艾蒂安は簡体字の対応形として残します。
聖という一字があることから漢字名の成立事情まで断定することはできません。誰が、どの資料で、この四字を最初に選んだのかは未確認です。日本語歴史原典、初出と選字者、現地音声を引き続き調べます。
参考資料
- フランス観光開発機構・Saint-Étienne都市紹介PDF、第1頁。サン・テティエンヌとSAINT-ETIENNEの対応。2014〜2016年の催しを扱う資料。
- 台湾教育部『外國大學參考名冊・歐洲地區』、PDF第57頁、フランス部分の印刷頁7。地域欄の聖艾蒂安と欧文・住所の対応。2026年10月30日閲覧。
- 北京大学工学院・フランス国立鉱業学校教授の来訪記事、2015年5月11日。本文の圣艾蒂安を含む学校名と欧文。
- INSEE・Saint-Étienne自治体人口と2023年基準人口の版説明。自治体人口と対象版。
- 外務省「フランス基礎データ」。国家首都パリ。
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。
次回予告|都市篇 第百七十六号
次は確認済みフランス自治体の掲載順に従い、Le Havreを予定します。港の紹介と町全体の統計を分けながら、漢字の全形を確かめます。
