万国漢字志

都市篇 · フランス

万国漢字志 都市篇 第二百号|サンポール――同じ名の向こうに、レユニオンの町を確かめる――

レユニオン島のサンポール。日本語の判決邦訳と総領事館の訪問報告を読み、圣保罗の二字を調整した聖保羅を暫定案とする。

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地名だけでは決まらない

Saint-Paulと書いてあっても、それだけでは今回の町に行き着けません。フランス本土にも同じ原綴りの自治体があります。本稿が訪ねるのは、本土を離れたレユニオン島のサンポールです。

日本語の論文には、裁判所の名の一部としてサンポールが現れます。中国語の総領事館報告では、原綴りを添えて**圣保罗市(Saint-Paul)**と記されます。二つの資料から場所を確かめたうえで、漢字をどう残すか考えます。


歴史表記

この町の日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 古い地理書や航海記の該当頁で、漢字と読み、指している場所をそろえて確認したわけではありません。初出や選字者も要継続調査です。

同名の場所の多さは、漢字用例を探すときにも問題になります。別の自治体や島についての記述を、名前が一致したという理由だけで、レユニオンの町の用例に数えることはできません。

今回確かめた日本語資料は2002年刊行の論文に含まれる判決邦訳、中国語資料は総領事館の訪問報告です。前者はカタカナ名、後者は現代中国語の漢字名の用例として扱います。日本語の歴史漢字を確認したものとはしません。


日本語での用例

慶應義塾大学が公開する青木隆「国際海洋法裁判所の五年」は、『法学研究』75巻2号、2002年2月に掲載された論文です。

その資料Ⅰにある判決邦訳の第35項、印刷頁189には、サンポール第一審裁判所という名が見えます。同じ項にレユニオンの地域海洋局の記述があり、レユニオンを舞台とする手続の文脈で読むことができます。

本稿は、この原頁に見えるサンポールを現代日本語都市名に採ります。これは邦訳者が日本語でどう表記したかを確認する資料です。裁判所名の存在をもって現代の市境界が分かるとしたり、判決の内容について新しい評価を加えたりするものではありません。


中国語圏その他の表記との比較

在サン・ドニ中国総領事館の「驻法国大使孔泉访问留尼汪推动加强互利合作」は、本文の日付欄に2010年2月10日と表示されています。記事は同月7〜8日のレユニオン訪問を伝え、第4節に**圣保罗市(Saint-Paul)**と記しています。

漢字と原綴りの併記に加え、訪問先がレユニオンだという本文のつながりがあります。この場所を指す用例として使えるのは、その両方がそろっているためです。

原資料の形は圣保罗。本誌では、圣を聖へ、罗を羅へ替え、真ん中の保はそのまま残します。提案する形は聖保羅ですが、原資料自体にその字形で載っているとはしません。

また、一つの総領事館記事から、台湾など他の地域の使い方までは確定できません。日本語の歴史的な表記や読みの定着とも分けておきます。


二文字・三文字案の比較

聖保

原資料の最後の罗に当たる部分を省く、本誌の二字の短縮案です。短くはなりますが、確認できた三字の末尾が失われます。この二字だけの形を今回の原資料から示すことはできません。

保羅

最初の圣に当たる部分を省く、本誌のもう一つの二字案です。やはり三字の一部分を落とす判断が必要で、元の字列をそのまま保つ案ではありません。短くしただけで、この町を他の場所と区別しやすくなるわけでもありません。

聖保羅

三字の構成と順序を保ち、二か所だけ字形を調整する案です。都市篇の標準字数に収まり、省略する字はありません。今回はこの形を採ります。

ただし、三字を保っても漢字だけで場所が一意に決まるとは限りません。原綴りとレユニオンという所在地を添えて使うことを、表記の選択と同じくらい大切にします。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

サンポール

所属国・地域

フランス・レユニオン島

原資料で確認した現代中国語表記

圣保罗

暫定制定都市名

聖保羅――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

原資料の圣保罗を基に、圣と罗の二字を調整するため「改」です。読みは日本語資料に見えるサンポールとし、日本語の通常の音読みだけでその読みが再現できるとはしません。

人口はINSEEの2023年1月1日基準で108,088人。2025年1月1日の自治体境界に基づき、2026年1月1日に発効した版の数値です。対象はレユニオンのサンポール自治体全体で、島全体の人口ではありません。


採らなかった表記と未解決点

聖保と保羅は、本誌が比較のために作った短縮案です。歴史的な別名や、確認済みの独立した使用例ではありません。

日本語の歴史的漢字表記、初出、読みを伴う原典、選字者の確認は残っています。フランス本土の同名自治体や、南インド洋の同名の島の資料についても、レユニオンの町へ根拠なく読み替えないようにします。

今回は、邦訳のカタカナ、訪問報告の漢字と原綴り、自治体人口という、それぞれ異なる資料の役割を分けました。同じ名を見つけるだけで終えず、どの場所の名なのかを、その都度確かめて使う三字案です。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第二百一号

次回はアルジャントゥイユ。フランス本土へ戻り、日本語と漢字の用例から町の名をたどります。