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万国漢字志 都市篇 第四十二号|セディウ――二字「塞久」と三つの語源説

セディウはセネガル南部、セディウ州の州都。カザマンス地方中央部の行政拠点で、2023年のコミューン人口は3万1511人。

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二字の既存形と三つの語源説

都市篇第四十二号は、セネガル南部の州都、セディウです。

前号のコルダからカザマンス地方を西へ進むと、カザマンス川の右岸にセディウがあります。セネガルの公的地理データは、この集落点を州都に分類しています。

中国語圏では、Sedhiouを、

塞久

と記す都市直接用例があります。

二字でセ・ジュの音に対応し、簡体字と日本で用いる字体の差もありません。一方、現地で語られる都市名の由来は一つに定まりません。今回は、漢字形の根拠と地名の由来を別々に確かめます。


日本語では「セディウ」

JICAの水産セクター調査報告書は、政府が種苗センターを開設した三つの場所の一つを「セディウ(Sedhiou)」と記しています。別のJICA報告書も、職業訓練施設の名称に原綴りのSedhiou、所在地に日本語のセディウを用いています。

これらは、日本語のセディウと原綴りのSedhiouが対応する公的資料です。ただし、本文中で「セディウ市」と行政単位まで明記した用例ではありません。同名の州、県、コミューン、都市があるため、資料の対象範囲は文脈ごとに区別する必要があります。

国立国会図書館サーチでは、セディウとセネガルを組み合わせた書誌、原綴りのSedhiou、漢字形の塞久を分けて調べました。今回確認できた公開書誌と検索可能な本文からは、この都市を指す日本語の歴史的漢字表記を特定できませんでした。

これは、過去の日本語資料に漢字表記が存在しないという証明ではありません。旧フランス領西アフリカの地図や地理書には、画像だけで残る本文や索引もあります。そのため、歴史表記は未収録とし、日本語原典の調査を続けます。


世界気象情報サービスの「塞久」

世界気象機関の世界気象情報サービス中国語版は、セネガルの都市一覧に塞久を載せています。対応する都市IDは2929です。

同じサービスの英語版で都市ID2929を確認すると、表記はSedhiouです。中国語版の塞久と英語版のSedhiouが同一の都市IDで結ばれているため、ここでの塞久は州名を切り出したものではなく、都市名を直接指します。

中国語版は中国気象局中央気象台が制作・維持しています。これは現在の中国語圏における都市表記の確かな使用例ですが、日本語の歴史的漢字表記ではありません。また、世界気象機関や中国気象局がこの二字を最初に考案したことを示す資料でもありません。

この二字を日本語の都市索引へ取り込むときは、どの言語圏の用例を根拠にしたかを残す必要があります。


州都であり、国の首都ではない

セネガル国土整備庁の公式地理データは、Sédhiouの集落点を州都に分類しています。現行のセディウ州は、セディウ県、ブンキリン県、グドンプ県から成り、都市セディウは同名の州と県の行政中心です。

一方、セネガル共和国の首都はダカールです。公式サイトの「首都」表示は国家首都かどうかを示すため、セディウは首都ではないと登録します。紹介文では行政上の役割が消えないよう、セディウ州の州都と明記します。

2008年の行政再編以前、セディウはコルダ州に属する県でした。その後、セディウ県が新しい州へ昇格し、都市セディウが州都となりました。同じSédhiouという語が都市、コミューン、県、州を指し得るのは、この行政史とも関係します。


コミューン人口は3万1511人

セネガル国家統計・人口経済分析庁の『人口推計 2023―2073』は、2023年国勢調査を基準に、州、都市部・農村部、県、郡、コミューンを分けて人口を掲げています。

セディウのコミューン行は、男性1万6083人、女性1万5428人、合計、

3万1511人

です。

同じ表にあるセディウ県19万3295人、セディウ州58万9264人とは別の値です。都市一覧では対象範囲を揃えるため、コミューン人口だけを採ります。

セネガル国土整備庁の公式KMLは、州都Sédhiouの集落点を北緯12.71139875425908度、西経15.56372619778401度に置いています。小数第六位へ丸めた北緯12.711399度、西経15.563726度を地図に使います。

これは都市を示す集落点であり、コミューン境界の重心ではありません。人口の範囲と地図上の一点は役割が異なります。


カザマンス川右岸の歴史都市

1887年刊行のフランス語地誌『Le Sénégal』は、カザマンス川をさかのぼった先のSedhiouを、小都市として紹介しています。当時の人口を約2500人とし、商館、フランス軍の守備隊、裁判所が置かれていたと記します。

セネガルの歴史的建造物一覧には、セディウ市のフォール・ピネ=ラプラード、県庁舎、大モスクなどが登録されています。川沿いの交易拠点と植民地行政の拠点が重なって形成された都市の痕跡です。

現在のセディウは、カザマンス地方の中央部に位置します。西のジガンショール、東のコルダと並べると、自然地域としてのカザマンスと、現在の三つの行政州との関係が見えます。

ただし、植民地期の行政拠点化を都市そのものの始まりと同一視はできません。フランス側の施設が置かれる以前から、周辺にはバイヌク、バランテ、マンディング系の人びとの居住と往来がありました。


語源は三説に分かれる

ジガンショールのアサン・セック大学に提出されたMorkéba Kotéの修士論文は、セディウの語源について三つの説明を記録しています。

第一は、Séloを畑の意味とし、バイヌクとバランテが耕した土地に結びつける説です。論文自体も、どの集落の畑を指すのかという問題を残しています。

第二は、マンディング語のSidiéを「向こうにとどまれ」という意味に解し、フランス人の居場所をめぐる交渉の言葉から地名が生まれたとする説です。

第三は、マンディング語で「戻って来い」を意味するとされるseynangに結びつける説です。セディウを訪れた人は再び戻って来る、という地域の語りに基づく説明とされています。

三つは、出発する語も、由来となる出来事も一致しません。論文は地域開発資料を通じてこれらを紹介していますが、同時代の命名記録を提示して一説を確定してはいません。本稿でも、どれか一つを確定語源へ引き上げず、複数の伝承があることを記録します。

特定の人物を都市名の命名者として一覧に載せることもしません。今回確認した資料からは、Sédhiouという名を公的に定めた人物も、漢字形の塞久を考案した人物も確定できないためです。


二文字・三文字案を比べる

塞久

世界気象情報サービスでSedhiouへの直接対応を確認できる二字形です。セ・ジュという二つの音のまとまりに対応し、都市篇で主流とする二字・三字の範囲に収まります。

塞迪烏

セ・ディ・ウの三拍を一字ずつ写す案です。しかし、セディウを塞迪烏とする都市直接用例は、今回の公的資料では確認できません。既存形より音を細かく写せても、新しく三字を組む根拠にはなりません。

西久

二字に収まり、セ・ジュの音へ近づけることはできます。ただし、西久をこの都市に対応させる既存用例は確認できません。確認済みの塞久から最初の字だけを交換する理由もありません。

字数と音だけから候補を量産せず、都市への直接用例がある形を優先します。


万国漢字志への取り込み

暫定制定都市名には、二字の塞久を採ります。

根拠は、世界気象情報サービスの中国語版と英語版が同じ都市IDで塞久とSedhiouを対応させていることです。字体を変換する必要がなく、既存の二字形をそのまま用います。

制定区分は創とします。日本語の歴史的漢字表記を復元するのではなく、中国語圏の既存表記を日本語の都市索引へ新たに取り込むためです。「塞久」という二字を本稿が初めて作った、という意味ではありません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

セディウ

所属国

セネガル

中国語圏で確認した都市名

塞久

暫定制定都市名

塞久――創

制定状態

暫定制定・日本語原典継続調査


採らなかった表記と未解決点

塞迪烏と西久は二字または三字に収まりますが、都市名としての直接用例がないため採りません。都市IDで対応を確認できる塞久を優先します。

未解決点は、日本語資料における歴史的漢字表記、三つの語源説を裏付ける同時代記録、現在の都市名を公的に定めた人物と時期、漢字形塞久の初出と考案者です。

人口は2023年国勢調査を基準とするコミューン行です。州・県人口とは区別します。座標は公式地理データの集落点であり、行政境界の中心点ではありません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第四十三号

次は、ジガンショールです。

セディウからカザマンス川をさらに西へ進み、ポルトガル領からフランス領へ移った都市の漢字表記を調べます。