万国漢字志

都市篇 · スペイン

万国漢字志 都市篇 第三百四十三号|セビリア――王宮の解説に残る旧称と「塞維利亜」――

王宮公式解説のHispalis・Spali・Ixbiliaと中国語冊子の表記を分け、日本語用の塞維利亜を提案する。


王宮の解説に残る旧称と「塞維利亜」

セビリア王宮の歴史解説は、建物の来歴を語り始めるところで、都市の名を Hispalis、Spali、Ixbilia と書き分けます。王宮を見る前に、地名だけでもいくつもの時代を通ることになります。現在の観光冊子の表紙には、中国語で「塞维利亚」。本稿では、その四字を日本語で用いる場合の形を考えます。


歴史表記

王宮の公式サイト「Historia del Real Alcázar」は、ローマ期の Hispalis、ゴート人の時代の Spali、中世初期の Ixbilia を挙げています。王宮を運営する機関が公開する現在の歴史解説に、この綴りの列を確認できます。

これだけで、各時代のすべての綴りや発音の変化を確定することはできません。とくに Ixbilia は、今回参照した解説の綴りとして残します。古代・中世の原本を直接確認したという意味ではありません。日本語の歴史的な漢字表記も、現時点では原典画像で確認できていません。


日本語での用例

スペイン観光公式サイトの日本語の都市案内では、「セビリア」の見出しと Sevilla の綴りが使われています。本誌の現代日本語都市名もセビリアとします。カナでの案内と漢字による音写は、それぞれ別の使用例として扱います。


中国語圏その他の表記との比較

スペイン観光当局の中国語版都市冊子は、表紙に「塞维利亚」と大きく掲げています。これは冊子自体の表紙画像でも字形を確認できる、発行主体による現代の用例です。日本語の古い漢字地名の証拠ではありません。

本誌では原文を「塞维利亚」のまま引用します。提案では维を維、亚を亜へ調整します。亜を選ぶのは日本語で用いる字形に合わせるためで、この冊子が「塞維利亜」と印刷しているわけではありません。


二文字・三文字案の比較

塞亜

二字へ縮める案です。冒頭と末尾は残りますが、中ほどの音写が失われます。元の四字との対応を示すには説明が要ります。

塞維亜

利を省く三字案です。二字案より元の形をたどれますが、省略を正当化する日本語の既存用例は今回確認できませんでした。

塞維利亜

四字の順序を保ち、字形だけを日本語向けに調整する案です。原資料と比べやすいことから、今回はこれを採ります。ただし、維・利・亜の音読みをそのまま足しても、セビリアの読みは得られません。必ずカナを添えます。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

セビリア(Sevilla)

所属国

スペイン

暫定制定都市名

塞維利亜――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

「改」は、確認した中国語の「塞维利亚」をもとに、本誌が日本語用の字形へ調整したことを示します。調整後の表記が原資料に載っているという意味ではありません。読みはセビリアとします。

INE(スペイン国立統計局)の年次センサス表68065によると、2025年1月1日の通常居住者人口は688,714人です。自治体コード41091の municipio 全域の値で、周辺の都市圏や同名の県の人口ではありません。市街地以外も含む行政区域の集計です。


採らなかった表記と未解決点

塞亜と塞維亜は本稿の比較案です。提案した塞維利亜の先行用例や命名者は未確認です。王宮の解説にある旧称の列と、現代中国語の四字がどのような翻訳史で結ばれるかも、この資料だけでは分かりません。日本語の地理書と中国語表記の初出は要継続調査です。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第三百四十四号

次号の題材は、人口と都市の同一性の確認を経て案内します。