万国漢字志

都市篇 · ドイツ

万国漢字志 都市篇 第二百八十号|ジーゲン――都市名欄のジーゲンと、二字の錫根――

金沢大学の都市名欄にあるジーゲンと青島科技大学の锡根市を確認。日本語音に寄せる創案と比べ、錫根を暫定案とする。


都市名欄にあるジーゲン

大学名と都市名が、同じ表の別の欄に載っています。金沢大学の派遣留学候補校一覧では、**ジーゲン(Siegen)**が都市名欄にあり、その隣にジーゲン大学が続きます。大学名の先頭だけを切り取らずに、市の読みを確かめられる一行です。

中国の協定先の案内は、大学の所在地を锡根市と書きます。二字を日本語の字体に調整した錫根は、短い形ですが、通常の音読みでジーゲンとは読めません。字数と読みの問題を分けて考えます。


歴史表記

ジーゲンの日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 今回の金沢大学資料は現代のカタカナ用例、中国の大学資料は現代中国語の用例です。どちらも日本語の古い刊本で錫根を確認した証拠にはなりません。

歴史地理書や古地図の該当頁は今回未照合です。漢字の初出や選字者も未確認のままとし、本誌による字体の調整を過去の史実に置き換えません。


日本語での用例

金沢大学の「大学間交流協定校(2023年09月現在)」は、派遣留学候補校を示す一枚のPDFです。ドイツのまとまりの中で、都市名欄にジーゲン(Siegen)、協定校名欄にジーゲン大学/University of Siegenがあります。

頁画像でも欄の対応を確認しました。本稿ではジーゲンを現代日本語名として採ります。資料が示す2023年9月は一覧の基準で、都市の命名時期ではありません。また、本稿が留学制度の現在の条件を案内するものでもありません。

現地市名は市公式サイトのUniversitätsstadt Siegenという表示でも確認できます。識別用の綴りはsiegenとします。Universitätsstadtの肩書を都市名の漢字に足すことはしません。


中国語圏その他の表記との比較

青島科技大学中独科技学院の「Universitat Siegen 锡根大学本科合作项目(自动化)」は2023年10月26日付です。本文は大学がドイツの北ライン・ヴェストファーレン州の锡根市にあると説明します。

見出しに大学名があるだけでなく、所在地として市を明示する用例です。協力する大学自身の案内なので、ここにある锡根を現代中国語での市名の使用例として扱います。大学の学生数や教育内容を都市の人口や性格へそのまま置き換えることはしません。

本誌は锡→錫とし、錫根へ調整します。確認した原文は锡根であり、調整後の形をこのページに印刷されていると説明することはできません。台湾など他地域で錫根が使われるかどうかも、今回未確認です。


二文字・三文字案の比較

慈源

慈のジ、源のゲンを手掛かりに組む、本誌の二字の創案です。日本語の読みへ近づける利点はありますが、ジーゲンの長音は字面だけでは示せません。都市を慈しみや源に結び付ける由来も、この二資料からは確認できません。

音の近さだけで、確認済みの锡根を置き換える理由は弱いと判断し、採りません。既存用例として提示する案でもありません。

慈伊源

ジ・イ・ゲンという分け方を意識し、長音の位置にも一字を置く本誌の三字案です。ただし、伊のイを長音として続けるのは本誌側の読みの指定で、慣用を確認したものではありません。

二字の慈源より長くしても、元の地名との結び付きが史料によって強くなるわけではないため採りません。

錫根

確認した中国語の二字を保ち、一字だけ字体を調整する案です。二字の標準内に収まり、原文との対応も示せるので採ります。

短くても自然にジーゲンと読めるわけではありません。 錫のシャク、根のコンという通常の音読みでは別の音になります。ジーゲンという読みは金沢大学の都市名欄から添えるもので、中国語の発音や日本語の音読みを精密に再現したという意味ではありません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ジーゲン

所属国

ドイツ

確認した現代中国語表記

锡根

暫定制定都市名

錫根――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

锡を錫へ調整するため「改」とします。二字の全体が本誌による無根拠な新作なのではなく、根拠にした原文と加えた操作を区別した分類です。日本語での歴史的使用を意味する「史」にはせず、ジーゲンの読みを添えます。

人口はDestatis年次版の2025年12月31日現在102,450人。2022年国勢調査を基礎とする公式人口更新統計、人口・境界とも2025年12月31日、2026年8月刊の版です。Siegen, Universitätsstadt(AGS 05970040)の自治体全体を扱い、大学の在籍者数やSiegen-Wittgenstein郡全体、周辺都市圏の人口とは分けます。


採らなかった表記と未解決点

慈源と慈伊源は、日本語の音へ近づける場合に何を新しく足すことになるかを見る比較案です。どちらも既存地名の用例ではなく、語義による命名の由来も未確認です。

錫根は中国語原文へ戻りやすい案ですが、読みを自動的に伝える力はありません。長音や子音の細かな発音を録音・発音辞典で照合したわけでもないため、金沢大学のカタカナを採る範囲にとどめます。

歴史漢字、漢字の初出と命名者、他の中国語圏の用字は継続調査です。大学の所在地を確認できたことと、大学の歴史的な活動範囲が現在の自治体境界に完全一致することも、別の問題です。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第二百八十一号

次回はメールス(Moers)を予定しています。人口基準の掲載順に沿って、市名の用例と漢字表記の候補を調べます。