万国漢字志

都市篇 · イタリア

万国漢字志 都市篇 第三百三十三号|シラクーザ――オルティージャの島から市の名をたどる――

オルティージャを起点にシラクーザの市域を確かめ、中国語用例「锡拉库萨」を検討する。採用名は字形を調整した「錫拉庫薩」(改)とする。


オルティージャの島から市の名をたどる

オルティージャ島のドゥオーモ広場には、シラクーザ市の法定の庁舎であるパラッツォ・デル・セナートがあります。市の基本条例に載るこの住所から、ユネスコが英語で Syracuse と呼ぶ古代都市の中心部へと話がつながります。ユネスコの解説によると、紀元前8世紀にコリントスから来たギリシア人が、オルティージャを拠点に都市を築きました。


歴史表記

ユネスコの登録解説では、古代都市とパンタリカの岩窟墓地は別々の構成部分です。シチリア州の1985年州法第34号第1条では、オルティージャは Siracusa の一地区として扱われます。日本語でこの街を漢字で書いた歴史的用例は、原典画像を確認できていません。


日本語での用例

農林水産省の地理的表示の公示は、レモンの名称を「Limone di Siracusa(リモーネ・ディ・シラクーザ)」と掲げ、本文で「シラクーザ地域」と記します。公示が指定するレモンの生産地と、ここで人口を数える市域は別の範囲です。


中国語圏その他の表記との比較

上海市民政局サイト掲載の随筆「邂逅古琉璃」には、筆者が2009年にシチリア島を訪ねたくだりに「锡拉库萨」とあります。これは現代中国語の旅行記における用例です。市の基本条例では Siracusa、ユネスコの英語版では Syracuse と記されます。


二文字・三文字案の比較

次の案では、短縮したときにどの音や字形の手掛かりが残るかを比べます。

锡萨

両端を残す二字案です。「ラ」と「ク」の手掛かりが落ち、旅行記の表記を引きにくくなります。

锡拉萨

库を省く三字案です。語中の「ク」が消え、ラから末尾に飛ぶ形になります。

錫拉庫薩

旅行記の「锡拉库萨」の四字と順序を保ち、锡→錫・库→庫・萨→薩と字形を調整して採ります。旅行記の用例を市の公定漢字名として扱うものではありません。日本語のカナ名では「クー」と伸ばし、末尾を「ザ」と濁らせますが、字列からその読みは決まりません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

シラクーザ(Siracusa)

所属国

イタリア

暫定制定都市名

錫拉庫薩――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

「改」は、現代の用例「锡拉库萨」を土台に、锡→錫・库→庫・萨→薩と採用字形を本誌が調整したことを示します。出典の引用には元の字形を残します。日本語の伝統的な漢字表記として認定するものではなく、「シラクーザ」の読みを添えます。

ISTATの2024年人口収支確定表では、2024年12月31日末(2025年1月1日初に相当)の国勢調査調整後の住民人口は115,776人です。自治体コード089017のコムーネ全域を対象とします。オルティージャ島の地区人口や、パンタリカを含む世界遺産の登録区域とは区別します。


採らなかった表記と未解決点

锡萨と锡拉萨は本誌の比較案です。四字形の日本語での歴史的使用や、中国語での初出は引き続き原資料を調べます。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第三百三十四号

人口選定資料で次の掲載順に当たるのはヴィチェンツァです。