万国漢字志

都市篇 · フランス

万国漢字志 都市篇 第百六十九号|ストラスブール――五字の名前と二字の略記――

ストラスブールの日本語名と公式中国語用例を照合し、斯特拉斯堡を既として暫定採用。人口は2023年基準・2025年境界・2026年発効の自治体PMUN293,771人。歴史的日本語漢字形の原典は継続調査。

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五字の名前と、二字の略記

ストラスブールを中国語で書いた斯特拉斯堡は五字です。ところが中国外交部の同じ訪問記録を読むと、本文の途中には斯堡という二字も現れます。長い名前と短い名前を、同じ資料の中で比較できる例です。

今回は五字の斯特拉斯堡を暫定案にします。二字の実例があることは記録しつつ、都市名の全形と、文脈を共有する文章内の略記を分けて考えます。


歴史表記

日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 現代中国語で五字が使われていることから、同じ形が日本の古い地理書にもあったとは推定しません。漢字名の初出、選字者、日本語への導入経路も未確定です。

国立国会図書館の「フランスの地図」にはStrasbourgの都市地図帳が紹介されています。これは所蔵資料の所在を知るための案内であり、今回、地図本体の用字や読みを確認したものではありません。案内に欧文名があることと、日本語の歴史的漢字形があることは別です。

また、台湾の智慧財產局が説明する斯特拉斯堡協定の名も、現在の公式解説で確かめた用例です。1971年の協定原本を閲覧した、あるいはその年に漢字名が成立した、という意味にはしません。


日本語での用例

在ストラスブール日本国総領事館の日本語頁には、機関名だけでなく、代表団のストラスブール市訪問という本文の用例があります。本稿の日本語名もストラスブールです。

欧文はStrasbourg。片仮名の長音を含む表記と、五つの漢字は、一字一音の対応にはなりません。斯・特・拉・斯・堡を通常の日本語音訓で順に読めば自然にストラスブールになる、とは説明できません。本誌は都市名全体にこの日本語読みを対応させます。

今回は現地話者のフランス語や地域の言語の音声を聴取していません。日本公館の文字用例を確認したことを、現地発音まで確認したこととは区別します。


中国語圏その他の表記との比較

中国外交部の市長との会見記録には、本文で斯特拉斯堡市が使われています。頁内の日付は2026年9月19日で、本文は9月10日の会見を記しています。URLの数字、記事掲載日、出来事の日は同じとは限りません。

同じ本文の後段には斯堡市长という短い形があります。全形が先に示された会見記事の中で、同じ市長を指す略記として読めます。ただし、この二字をすべての場面で通用する独立した都市名と認定することはしません。別の都市と取り違えないための文脈も、用例の一部です。

台湾の智慧財產局の国際特許分類の説明は、國際專利分類斯特拉斯堡協定という名称を使います。こちらは条約名に含まれる用字で、市域人口の資料ではありません。今回見た大陸側と台湾側の資料では五字が共通していますが、中国語の全地域・全時代の唯一の形だとまではしません。

漢字の字義から街の成立史を組み立てることも避けます。堡という字があることだけで、当地の城塞や語源についての説明を確定することはできません。


二文字・三文字案と五字の全形

斯特拉斯堡

公式本文に現れる五字の全形です。本誌の新造ではなく、既として暫定採用します。五字を保持する理由は、現用の名前を途中で削らず、どの形を採ったか出典と対照できるようにするためです。日本語や現地音の完全再現を保証する意味ではありません。

斯堡

同じ会見記事にある二字の略記です。本誌が新しく作った略号とはしません。ただし、記事内で相手が分かっているときの略記と、都市名を一覧で独立して掲げる場合は条件が違います。今回の制定都市名には全形を採り、斯堡は確認した実用略記として残します。

斯拉堡

三字へ縮める本誌の比較案です。今回この形そのものの都市名用例は確認していません。特と二つ目の斯を落とすと、元の五字との対応が弱くなります。字数を標準に合わせるためだけに採る理由はありません。

二字の実例があるから最短形が最善、とは決めません。全形と略記の使われ方を見て、用途を選びます。


293,771人の市域

人口はINSEEの自治体コード67482の表で、293,771人です。採用するのはpopulation municipale。別計上人口2,781人を含むpopulation totaleの296,552人とは区別します。

対象版の説明に従い、人口基準日は2023年1月1日、自治体境界は2025年1月1日、発効日は2026年1月1日とします。2026年に効力を持つ版を、2026年に測定した人口と読み替えません。

対象はStrasbourgというcommune全体です。周辺自治体を含む広域行政組織や都市圏、国境を越えた地域、市内地区を別都市として重ねて加算しません。領事館の管轄地域や条約の名称も、市域人口の境界を定めるものではありません。

国家の首都は外務省のフランス基礎データでパリと確認できます。本稿ではストラスブールを現在の国家首都に区分しません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名
ストラスブール

所属国
フランス

暫定制定都市名
斯特拉斯堡――既

制定状態
暫定制定・原典継続調査

五字の全形を保持し、二字の略記は使用場面を添えて残します。本誌の選定であって、日本語の公定表記を変更するものではありません。


採らなかった表記と未解決点

斯堡は既存の文脈内略記、斯拉堡は本誌の短縮比較案として、性格を分けて記録します。どちらも今回は主表記にしません。

日本語歴史原典、五字の初出と選字者、発音資料の確認は継続課題です。現代の使用例を確かめたところから、過去の用字まで一度に確定したことにはしません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第百七十号

次はボルドー(Bordeaux)。人口確認済みの掲載順に従い、波爾多と波尔多の現用例を比べます。