人口表の一行から、橋の材料の記録へ
前号のシンカセに続き、トーゴの都市人口表に戻ります。上から読み進めると、まだ本誌で扱っていない町としてTabligboが現れます。2022年の都市人口は36,961人。ノッツェとチャンバの間に置かれた一行です。
この町の日本語名は、橋梁建設の報告書で見つかりました。橋そのものの所在地としてではなく、セメントを調達する先として出てきます。都市名を探すと、道路や国境に行き当たることもあれば、材料の話に行き当たることもあります。
第百号では、タブリゴを取り上げます。今回は、漢字を短くまとめることと、日本語の音を残すことが、少し競り合う町です。
日本語のタブリゴとタブリグボ
JICA『トーゴ国 カラ・クモング2橋梁建設計画 準備調査報告書(簡易製本版)』は2014年12月の資料です。**印刷96頁(PDF119頁)**の資材調達の説明に、タブリゴという日本語形があります。原頁画像で文字を確認しました。
同頁では、WACEMという企業のセメント工場の所在地としてタブリゴを挙げています。一方、IFCのWACEM事業資料に収録された1998年の環境審査概要は、工場と関連する採石場をTabligbo付近に置いています。この企業名と所在地の対応から、JICAのタブリゴを人口表のTabligboに対応する日本語用例として採ります。工場の敷地と都市の集計範囲が同じだという意味ではありません。
もう一つ、平井史生「クリマダイアグラム試作品」の地点一覧には、**タブリグボ【トーゴ】**が掲載されています。駒澤大学のドメインで公開された作成者自身のページで、漢字都市名の用例ではなく、日本語の別表記を確認する資料です。
本稿では公的調査報告書の形を重視し、見出し名と提案の読みをタブリゴとします。ただし、タブリグボを誤記として消すことはしません。日本語表記が一つに統一されていることも、公称がタブリゴに定まっていることも、今回の資料だけでは確認できません。原語の発音をこの四拍だけで完全に再現したとも主張しません。
工場に関する記述は資料作成時のものです。現在の操業状況や生産量を示す資料としては扱いません。
歴史的な日本語漢字表記は未確認
今回確認した日本語資料はカタカナ表記です。制定に採れる歴史的な日本語漢字表記や、日本語での漢字の先行使用・提案は現時点では原典未確認です。
漢字形を検索して見つからなかったことだけで、過去に一度も使われていないとは言えません。古い地図や地理書の画像本文を含め、要継続調査とします。
後に示す多武利呉は、史料から復元した名前ではなく、本誌が今回選ぶ新案です。
中国語では塔布里博
国連文書**CEDAW/C/TGO/1-5(2004年)**の中国語版には、塔布里博という地名形があります。OHCHRの公式配布一覧に掲載される、トーゴ政府報告書の各言語版です。
中国語版34頁の脚注39には、当時の第三級法廷の所在地を並べた一覧があり、塔布里博を含みます。英語版30頁の脚注39では、同じ一覧の対応する位置にTabligboがあります。保存済みの両言語版の原頁画像で照合しました。
ここで確かめられるのは、塔布里博がTabligboに対応する中国語の地名用例であることです。法廷所在地の一覧なので、町の識別に役立ちます。ただし、当時の法廷の区分や配置を現在の制度として説明することはしません。
また、法廷所在地の地名と、2022年の都市人口の統計境界が同じ範囲を指すかは未確定です。中国語形の初出、選字者、台湾等での公的標準も未確認です。
四字の漢字形が既に中国語で使われていても、日本語での先行用例とは別です。塔布里博の確認だけを理由に、日本語の制定区分を「既」とすることはできません。
36,961人は都市の人口
INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21、印刷33頁(PDF51頁)では、Tabligboの居住人口を男性17,643人、女性19,318人、合計36,961人としています。表題はトーゴ各都市の2022年居住人口を男女別に示すものです。続きの**印刷34頁(PDF52頁)**には、出典としてINSEEDの第5回国勢調査、2022年の人口空間分布資料が記されています。表題・行の数値・表末尾の出典を原頁画像で確認しました。
同じ年鑑の**表3.14、印刷21頁(PDF39頁)**では、県YOTOが174,851人、自治体YOTO 1が77,353人です。これも原頁画像で確認しました。都市表の36,961人と、行政区画の人口を取り違えてはいけません。
本稿の人口は、トーゴの統計がTabligboという都市として集計した居住人口です。県全域や自治体全域、セメント工場の従業者数には使いません。都市の細かな統計境界はこの表だけでは分からず、要継続調査です。
Gettyの地名典拠TGN、Tabligbo(1094900)は、トーゴのMaritime地域の居住地として記録し、代表座標を北緯6.5833度、東経1.5000度としています。これは都市の位置を示す点で、都市境界や工場位置の座標ではありません。
所属国はトーゴです。外務省の基礎データでは国の首都をロメとしており、タブリゴは国の首都ではありません。
二文字・三文字案の比較
多呉
二字の試案として、多呉を置きます。タとゴだけなら残せますが、中央のブリが落ちます。短さは得られても、本稿で採る日本語名から離れるため、今回は採りません。既存用例ではなく、比較のための本誌の試案です。
多利呉
三字の多利呉なら、タ・リ・ゴを字面に残せます。しかし、ブが省かれます。日本語用例のタブリゴを示すために、読み手に一音を補ってもらう案になるため、これも採りません。
多鰤呉
三字で音を省かずに示す試案もあります。多鰤呉です。漢字ペディア「鰤」には訓読みのぶりがあり、タ・ブリ・ゴという対応を説明できます。
ただし、鰤は21画の難字で、字義は海魚のぶりです。この町について、魚に由来する名前や漁業との関係を確認したわけではありません。読みの根拠はあっても、三字に収めるためにこの字を中心に置くと、書きやすさと字義の面で負担が残ります。
本誌の標準は二字・三字ですが、文字数だけを満たすことより、今回の日本語名を無理なく説明できることを重視します。この案は比較記録に残し、採用しません。
四字の多武利呉
本誌の案は多武利呉です。漢字ペディアの「多」にはタ、「武」にはブ、「利」にはリ、「呉」にはゴの音読みがあります。四字とも常用漢字で、タ・ブ・リ・ゴの四拍を、それぞれ辞書で確認できる音読みに対応させます。
多武利呉という都市名の読みが辞書に載っているわけではありません。各字の読みを、本誌が地名用に組み合わせた当て字です。
武には軍事を、利には利益を連想させる意味があり、呉は中国の古い国名でもあります。本稿ではこれらを、町の性格、産業、歴史的な中国との関係を表す字として使いません。四字全体も、意味の文句として読むためのものではありません。
四字は標準より長くなります。それでも今回は、二字・三字の省略案より音の対応が明瞭で、鰤を用いる三字案より書きやすいことを理由に、この例外を採ります。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
タブリゴ(別用例:タブリグボ)
原綴り
Tabligbo
所属国・対象
トーゴの都市。人口はINSEEDの都市集計に対応させ、県・自治体全域や工場敷地とは区別する。
中国語の確認形
塔布里博――国連文書の法廷所在地の用例。
暫定制定都市名
多武利呉
読み
タブリゴ
制定区分
多武利呉――創
制定状態
暫定制定・原典継続調査
編纂綱領第三条・第四条・第五条・第八条・第九条に従い、日本語用例、中国語用例、本誌の新案を分けます。塔布里博の中国語用例は確認しましたが、制定に採れる日本語漢字の先行使用・提案は原典未確認です。
今回の「創」は、日本語用例が未確認だから自動的に付ける区分ではありません。タブリゴの四拍を残し、各字の音読みで対応を説明するため、新たに多武利呉を選定するという判断に対して付けます。中国語形の字体を日本字体に直した案でも、史料の復元でもありません。
二字・三字を標準とする本誌では四字は例外です。音の省略と難字を避ける今回の理由を明記し、より適切な既存用例や短い案が確認できた場合には再検討します。
採らなかった表記と未解決点
塔布里博は確認した中国語形として保存します。日本語のタブリゴとの読みの対応を優先するため、そのままの採用は見送ります。多呉と多利呉は音が省かれ、多鰤呉は難字と字義の負担があるため採りません。いずれの試案も本誌による比較案で、先行使用を確認した形ではありません。
日本語の歴史的漢字表記、漢字の先行使用・提案、中国語形の初出・選字者、地名の語源と命名者は未確認です。都市の統計境界、日本語表記の公的な統一形、原語の発音と日本語二形との厳密な関係も継続調査とします。一字略称は制定しません。
人口表では一行だった町が、橋の材料の記録では供給先になり、国連文書では法廷の所在地になります。資料ごとの見え方を残しながら、本誌では日本語のタブリゴに対応する多武利呉を、四字の暫定案として置きます。
参考資料
- JICA『トーゴ国 カラ・クモング2橋梁建設計画 準備調査報告書(簡易製本版)』、2014年12月。印刷96頁(PDF119頁)の資材調達の節でタブリゴとWACEMの対応を原頁画像で確認。操業の記述は当時のもの
- IFC、West African Cement、事業8962。掲載された1998年5月18日の環境審査概要、Project Descriptionで工場・採石場とTabligbo付近との対応を確認
- 平井史生「クリマダイアグラム試作品」、2018年9月3日版、ページに2019年・2020年の修正記載。地点一覧のタブリグボ【トーゴ】を確認。漢字表記や公称の根拠とはしない
- OHCHR、トーゴ政府報告書CEDAW/C/TGO/1-5(2004年)の公式配布一覧。保存済み中国語版34頁脚注39と英語版30頁脚注39を原頁画像で照合し、塔布里博/Tabligboを確認
- INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』。保存済みPDFの表3.21、印刷33~34頁(PDF51~52頁)の都市人口と出典、表3.14、印刷21頁(PDF39頁)の県・自治体人口を原頁画像で確認
- Getty Research Institute、TGN、Tabligbo(1094900)。居住地の分類、トーゴ・Maritime地域への所属、代表座標6.5833・1.5000。市域境界の根拠にはしない
- 日本漢字能力検定協会「漢字ペディア・多」。音読みタ
- 同「武」。音読みブ
- 同「利」。音読みリ
- 同「呉」。音読みゴ。四字の都市名の先行用例ではなく、各字の読みの根拠として使用
- 同「鰤」。訓読みぶり、21画、海魚の字義。採らなかった三字案の比較に使用
- 外務省「トーゴ共和国基礎データ」、一般事情・首都ロメ
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。
都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。
次回予告|都市篇 第百一号
次回もトーゴの都市人口表に載る未収録都市を候補に、日本語名と漢字形の資料を確認してから選びます。
