人口表の一行上へ
前号のマンゴーを調べた人口表で、Mangoのすぐ上にあるのがTchambaです。今回は、トーゴ中央州のチャンバを取り上げます。
同じ統計年鑑の別の頁を開くと、TCHAMBAという名がもう一度現れます。ただし、こちらは県とその下の自治体を並べた表です。町の名が見つかったからといって、そこに載る人口をどれでも使えるわけではありません。
漢字形の調査でも、似た注意が必要でした。国連報告書の中国語版にある昌巴は、保護区の所在地を示す括弧の中に現れます。町を指すのか、同名の県を指すのか。その一箇所だけでは決められません。地名資料と人口表を、それぞれの範囲に戻して読んでいきます。
日本語名はチャンバ
GeoNamesのTchamba公式RDFには、日本語の別名としてチャンバが登録されています。言語指定は日本語です。同じ項目の国コードはトーゴを表すTG、地物分類は集落を表すP.PPLで、県の項目とは区別されています。
本稿の現代日本語都市名は、この登録に基づくチャンバとします。ただし、GeoNamesの別名登録は、日本の公的な名称制定を意味しません。日本語名を誰が登録したのか、どの日本語資料から採ったのかは、今回確認したRDFでは分かりません。
カタカナ名の根拠と漢字名の根拠は別です。日本語の別名欄にあるのはチャンバであり、次に検討する昌巴は中国語の別名欄にあります。
歴史的な日本語漢字表記は未確認
今回の調査では、チャンバを漢字で記した日本語の歴史資料・古地図の原典は確認できませんでした。昌巴の日本語での先行使用・提案例も原典未確認です。
これは、日本語の漢字形が存在しないと確定したという意味ではありません。現時点で示せる日本語名の用例と、中国語資料で確かめた漢字形を分けて記録します。
中国語の昌巴は何を指すか
GeoNamesの集落項目では、中国語の別名として昌巴が登録されています。チャンバと昌巴が同じ都市項目に対応していることは、ここで確認できます。ただし、この漢字形の初出・選字者・登録元は未確認です。
もう一つの用例は、国連に提出されたトーゴ政府報告書CEDAW/C/TGO/1-5です。OHCHRの公式資料一覧に掲載された中国語版の26頁、「1.4.5. 旅游和饭店设施」には、アブドゥライ野生動物保護区の後に括弧書きで昌巴が現れます。英語版22頁の同じ節では、対応する括弧内がTchambaです。両言語の原頁画像を照合しました。
この対照によって、昌巴が地名Tchambaに対応する中国語用例であることが分かります。一方、保護区についての記述は、その保護区が市街の中にあることまで示しません。この箇所が都市と県のどちらの範囲を指すかは未確定として残します。
同報告書の民族・言語に関する記述には、昌巴人という形もあります。人々の名を記した箇所を、都市名の用例に数えることはしません。今回の都市名の根拠は、GeoNamesの集落項目に置きます。
国連文書に掲載された中国語形も、日本語での使用例には読み替えません。また、台湾での公的標準、各漢字形の普及度は未確認です。
36,173人は都市の人口
INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21は、2022年のトーゴ各都市の居住人口を男女別に示す表です。印刷33頁(PDF51頁)のTchambaは、男性17,915人、女性18,258人、合計36,173人です。表の続きの印刷34頁には、出典としてINSEEDの第5回国勢調査、2022年の人口空間分布資料が示されています。数値・表題・出典を原頁画像で確認しました。
一方、同年鑑の表3.16、印刷23頁(PDF41頁)には、県全体のTCHAMBAが200,585人、自治体TCHAMBA 1が82,451人と記されています。いずれも都市表の36,173人とは集計範囲が違います。
本稿で採るのは、表3.21の都市として集計された居住人口です。県全体、自治体全域、都市圏の人口とは扱いません。都市の細かな統計上の境界は今回の表だけでは確認できず、要継続調査です。
座標はGeoNamesの集落項目に基づく北緯9.03333度、東経1.41667度とします。これは都市を示す代表点であり、市域の境界を示すものではありません。GeoNamesにある人口値はこの国勢調査値と異なるため、人口の出典にはINSEEDを用います。
所属国はトーゴです。外務省の基礎データでは首都はロメであり、チャンバは国の首都ではありません。
二文字・三文字案の比較
昌巴
中国語の既存形として確認できる二字です。GeoNamesでは都市への対応が明示され、国連報告書ではTchambaという地名との対照も取れます。
日本語の字音で「昌」をショウ、「巴」をハと読んでも、チャンバがそのまま再現されるわけではありません。本誌の案では、漢字形に都市名チャンバを対応させて読む当て字として扱います。日本語の通常の音読みと、現代のカタカナ名が一致するとは主張しません。
この二字を選ぶ理由は、都市への対応が確かめられた既存形を参考にでき、表記も簡潔だからです。字面から繁栄や地形を連想して、町の語源や歴史を説明することはしません。
三字化を採らない理由
チャンバの音を細かく分けて三字の新案を作る余地はあります。しかし、今回確認できた昌巴に字を足すだけでは、日本語の読みや地名の由来の根拠が増えるわけではありません。
今回は二字の昌巴を選びます。三字の既存漢字形は未確認であり、比較のために作った形を既存用例として並べることもしません。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
チャンバ
原綴り
Tchamba
所属国
トーゴ
中国語の確認形
昌巴
暫定制定都市名
昌巴
制定区分
昌巴――創
制定状態
暫定制定・原典継続調査
編纂綱領第三条・第五条・第九条に従い、日本語の既存用例と中国語の参考形を分けます。「既」は、既に日本語で使用または提案された例が確認できる表記です。今回の中国語用例だけでは、昌巴を日本語の「既」とする条件を満たしません。
本稿では、制定に採れる日本語漢字の既存用例を確認できない現段階で、都市に対応する中国語形を参考に、昌巴を日本語の制定名として新たに選定するという意味で「創」を暫定的に用います。文字列そのものを本誌が初めて作ったという主張ではありません。
日本語用例が未確認だからという理由だけで自動的に区分を付けるのではなく、都市との対応、二字の簡潔さ、音読みとの隔たりを検討したうえでの選定です。字体・字数の調整はしておらず、「改」とするための変更も加えません。日本語の先行用例が確認できれば、制定区分を再検討します。
未解決点を残す
日本語の歴史的漢字表記、昌巴の日本語での先行使用・提案、中国語漢字形の初出と選字者、地名の語源と命名者は未確認です。一字略称も制定しません。
国連報告書の保護区の所在地表記が指す範囲、国勢調査における都市境界も未確定です。保護区や民族の説明を、そのまま市街の紹介や地名の由来に移し替えることはできません。
マンゴーの一行上から始まった調査ですが、チャンバの名は複数の範囲にまたがっていました。都市名として昌巴を選ぶときにも、町を示す用例と、その周囲を示す記述との違いを残しておきます。
参考資料
- GeoNames、Tchamba(2363908)の公式RDF。集落分類P.PPL、国コードTG、日本語別名チャンバ、中国語別名昌巴、座標9.03333・1.41667を確認。別名の登録元・初出は未確認
- 国連・OHCHR、トーゴ政府報告書CEDAW/C/TGO/1-5の公式資料一覧。中国語版26頁と英語版22頁の観光に関する節で、保護区の所在地に付された昌巴/Tchambaを原頁画像で照合。都市・県のどちらを指すかは未確定
- INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』。表3.21、印刷33~34頁(PDF51~52頁)の2022年都市人口と出典、表3.16、印刷23頁(PDF41頁)の同名県・自治体人口を原頁画像で確認
- 外務省「トーゴ共和国基礎データ」、一般事情・首都ロメ
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。
都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。
次回予告|都市篇 第九十九号
次回もトーゴの都市人口表に載る未収録都市を候補に、日本語名と漢字形の根拠を確認してから選びます。
