万国漢字志

都市篇 · イタリア

万国漢字志 都市篇 第三百三十六号|テルニ――水路をめぐる古い議論と「特爾尼」――

タキトゥスが記したナール川の水路案をたどり、現代中国語の「特尔尼」を検討する。採用名は字形を調整した「特爾尼」(改)とする。


水路をめぐる古い議論と「特爾尼」

テヴェレ川の洪水を抑えるために、支流や湖の水の流れを変えたらどうか。タキトゥスの『年代記』には、その案がローマの元老院で議論された場面があります。ナール川をいくつもの水路に分ければ肥沃な耕地が水に浸かる、と訴えた人々の名は Interamnates。現在のテルニにつながる名です。


歴史表記

『年代記』第1巻第79章に出てくる Interamnates は住民を指す複数形です。テルニ市の公式観光案内は、現在の市街にあったローマ時代の都市を Interamna Nahars と呼び、「二つの川の間の街」と説明しています。案内には、フラミニア街道が通った市内の軸と、現在のレプッブリカ広場に重なる古代の広場も示されています。日本語の歴史的な漢字表記は原典画像で確認できていません。


日本語での用例

明治大学のリポジトリにある武器製造技術移転の研究では、イタリアの工場名を「テルニ造兵廠」と記し、Fabbrica d'Armi di Terni を併記しています。この資料では施設名の一部として「テルニ」が使われています。


中国語圏その他の表記との比較

北京大学世界遺産研究センターの報告は、2006年の国際産業遺産保存委員会の年会の開催地を「意大利特尔尼(Terni)」と記しています。研究者の参加報告に見える現代中国語の用例です。


二文字・三文字案の比較

特尼

中の尔を省く二字案です。二字にすると「ル」に当たる位置がなくなり、参加報告に載る表記とも一致しません。

照留尼

「照る」のテ、留のル、尼のニを手掛かりにした本誌の三字案です。照のテは「照る」の訓から送り仮名を外した読みで、一字だけではショウとも読めます。「照る」の意味も市名の由来とは結び付きません。

特爾尼

参加報告の「特尔尼」の尔だけを爾へ調整して採る三字案です。尼には「ニ」の字音がありますが、特は普通「トク」と読み、爾から日本語の「ル」を導くのも難しいため、カナの併記が要ります。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

テルニ(Terni)

所属国

イタリア

暫定制定都市名

特爾尼――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

「改」は、現代の用例「特尔尼」を土台に、尔→爾と採用字形を本誌が調整したことを示します。出典の引用には元の字形を残します。日本語の伝統的な漢字表記として認定するものではなく、「テルニ」の読みを添えます。

ISTATの2024年人口収支確定表では、12月31日末の国勢調査調整後の住民人口は106,310人です。2025年1月1日初に相当する値で、自治体コード055032のコムーネ全域を集計しています。同名の県や周辺を含む都市圏の人口は別の集計です。


採らなかった表記と未解決点

特尼と照留尼は比較案にとどめます。日本語での歴史的な漢字表記と、現代中国語の用字の初出は引き続き調査します。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第三百三十七号

次回は、ポー川沿いのピアチェンツァを取り上げます。