万国漢字志

都市篇 · フランス

万国漢字志 都市篇 第百七十三号|トゥーロン――港の記録と土倫の市域――

トゥーロンの日本語名と公式中国語用例を照合し、土倫を既として暫定採用。人口は2023年基準・2025年境界・2026年発効の自治体PMUN179,116人。日本語歴史原典・初出・選字者は継続調査。

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港の記録に現れる、土倫の二字

トゥーロンの日本語名を公的な資料で探すと、海上自衛隊の航海記録に行き着きます。中国語の外交記録にも、艦艇が訪れた港として土伦が現れます。台湾の海軍が公開する論考では、欧文Toulonに土倫が添えられています。

港の名前として読んだ地名を、そのまま町全体の人口に結び付けてよいでしょうか。漢字の形を確かめる資料と、市域を定める統計を分けながら、本稿では土倫を暫定採用します。


歴史表記

日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 日本の古い海軍資料や地理書などの該当紙面で、土倫という用字と読み、都市の同定を揃えて確認したとは言えません。漢字形の初出と選字者も未確定です。

今回参照する台湾の論考は、昔の海戦を扱う現代の文章です。本文に十八世紀の出来事と土倫の名が並んでいるからといって、その時代の中国語史料に同じ漢字があったことにはなりません。出来事の年代と、読んでいる文章が書かれた時代を分けます。

日本語の歴史的用例が未確認であることだけを理由に保留するのではなく、現在閲覧できる公式資料の使用形を、どこまで確かめたかとともに残します。


日本語での用例

海上自衛隊の令和4年度遠洋練習航海の公式頁は、訪問予定国・寄港地の一覧に**フランス(トゥーロン)**と記しています。本稿の現代日本語名もトゥーロンとします。

同じ頁にはトゥーロンでの活動を示す見出しもありますが、ここでは文字で書かれた地名の用例を参照します。写真の場所を一枚ずつ独立に照合したり、航海全体の実施を監査したりしたとの主張はしません。

土・倫を日本語の普通の音訓で並べても、トゥーロンの音にそのまま一致するわけではありません。トゥという表記や長音を含む日本語名を、二字から自動的に読み取れるとはしません。土倫という名前全体にトゥーロンの読みを対応させます。現地話者の音声は今回聴取していません。


中国語圏その他の表記との比較

中国駐マルセイユ総領事館の艦隊訪問記録は、2017年10月21日付です。本文は10月15日から18日の訪問を記し、港を指す箇所には土伦军港、地方関係者との会見を記す箇所には土伦市という形が使われています。

同じ二字が港と市の双方に付くことを、この本文で確認できます。ただし、軍港と自治体全体の境界が一致するという意味ではありません。

台湾の海軍公式サイトが公開する「歷史觀點中的存在艦隊概念」は、『海軍學術雙月刊』第五十一巻第四期に掲載された翻訳論考です。2017年8月1日付の誌面の101頁で、**土倫(Toulon)**と欧文・漢字の対応を確認できます。公開案内の日付は2017年9月8日で、誌面の日付とは区別します。

今回、この論考は土倫の用字とToulonの対応を読むために参照しました。論考が扱う戦略論や個々の戦史を、本稿で改めて検証したものではありません。土伦から字体を変換するだけで済ませず、台湾側の実際の使用形も確かめました。


二文字・三文字案の比較

土倫

台湾の公式公開論考で、Toulonとの対応を確認した二字形です。既として暫定採用します。通常の日本語音訓だけで原音を完全に表せることではなく、すでに使用される漢字名であることを根拠にします。

土伦

中国総領事館の本文に使われる簡体字形です。既存の対応形として併記します。土倫を主表記にすることは、この形を誤りと認定することではありません。

土倫港

三字にして港を明示する、本誌の比較形です。末尾の港は場所の種類を限定し、トゥーロンの音の一部を担うものではありません。本稿は港だけでなく自治体全体を対象とするため、制定都市名には付けません。今回この三字形の繁体字用例自体を原典確認したとはしません。

字を一つ足せば地名の対象が狭まることもあります。字数だけでなく、何を指す名前として使うかを判断する必要があります。


179,116人の市域を数える

人口の根拠はINSEEの自治体コード83137の表です。Toulonのpopulation municipaleは179,116人。別計上人口1,658人を含むpopulation totaleの180,774人とは分け、PMUNを採ります。

対象版の説明によれば、人口基準日は2023年1月1日、自治体境界は2025年1月1日、発効日は2026年1月1日です。2026年の推計人口として紹介するものではありません。

範囲はToulonというcommune全体です。軍港の敷地やそこに属する人員だけを数えた値ではありません。周辺市、広域行政組織、連続市街地・都市圏、市内地区を別都市として重ねて加算しません。港の訪問記録は漢字の用例を支えますが、人口の範囲を定める根拠は自治体統計に置きます。

フランスの国家首都は外務省の基礎データでパリと確認できます。本稿のトゥーロンは、現在の国家首都には区分しません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

トゥーロン

所属国

フランス

暫定制定都市名

土倫――既

制定状態

暫定制定・原典継続調査

確認できた二字形と日本語の読みを組にして示します。日本語の公定表記を変更するものではありません。


採らなかった表記と未解決点

土伦は確認した簡体字形として残し、土倫港は港に対象を限定する比較形に留めます。土という字があることから地形を、倫という字があることから町の性格を説明する根拠は得られません。

日本語の歴史原典、漢字名の初出と選字者、現地音声の確認は継続課題です。現代の論考の用字を、そこに描かれた時代の文字へ遡らせないことも、今回の暫定案の条件にします。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第百七十四号

次は確認済みフランス自治体の掲載順に従い、Reimsを予定します。日本語の都市名と漢字形は、次稿で資料を確認して示します。