人口表の続きを、南の町へ
前号のダパオンで開いたトーゴの人口表には、まだ取り上げていない都市が並んでいます。その一つが、南部のツェビエ(Tsévié)です。今回は同じ表を読み継ぎながら、日本語の現地踏査記録と、国連食糧農業機関(FAO)の写真説明へ進みます。
JICAの報告書では、ツェビエは道路をたどる日程の途中に現れます。FAOの中国語資料では、家畜を飼う場所として策维埃の三字が載っています。地図の記号だけでなく、移動や暮らしを記した資料にも、都市名を探す手掛かりがあります。
前号の予告は都市を調整中としていました。人口の多い順に次の町を決めるのではなく、日本語名と漢字名を直接確かめられ、既刊で使った資料ともつながるこの町を選びました。
踏査日程の「ツェビエ」
JICAの『トーゴロジスティクス回廊開発・整備計画策定調査 詳細計画策定調査報告書』は、表紙に2012年4月とあります。印刷2頁(PDF12頁)の「1-5 日程」は、同年4月2~11日の調査日程を示しています。
4月7日の現地踏査には、ロメ、アフラオに続いてツェビエがあり、そこからケベ、ガドジャガン、ノッツェを経てソコデへ向かう経路が記されています。翌日の行にはカラもあります。第八十五号のソコデ、第八十七号のカラと、今回の町が一つの調査日程に載っています。
今回の日本語名の根拠は、報告書の題名から推測したものではなく、この日程中の地名です。原頁画像でも、道路番号の間に置かれたカタカナを照合しました。日程を記した資料として読み、現在も同じ経路を同じ条件で走れるという説明には使いません。
日本語の歴史的漢字表記は未確認
日本語資料のツェビエは確認できましたが、この都市を漢字で記した古い日本語地理書・地図の用例は、現時点では原典未確認です。
後に読む中国語資料の三字を、そのまま日本語の歴史表記として記録することはできません。また、今回見つからなかったことは、過去に漢字表記が存在しなかったという証明でもありません。日本語の漢字用例は継続調査とします。
写真の下にある「策维埃」
FAOの中国語資料『为城市供应食物』の家畜を扱う分冊は、都市や都市周辺での畜産、食料の供給、衛生と環境の問題を説明しています。配布PDFの第2頁、左下の写真には、建物の前に人と家畜が写っています。
その写真説明は、食物の需要や都市に近い販売機会について述べた後、**「多哥策维埃」**での食糧安全保障特別計画による飼育を紹介しています。「多哥」は国名、その後の「策维埃」は活動の場所です。施設名や事業名の一部から地名を取り出したのではありません。
FAOの英語版『Food for the Cities』のPDF第8頁にも、同じ写真と、同じ撮影者表示があります。対応する写真説明の地名はTsevié, Togoです。中国語と英語の原頁画像を並べることで、写真説明の策维埃が、このトーゴの町を指すことを照合できます。
この資料では、テキスト抽出に文字の崩れがありました。検索結果の断片だけで済ませず、中国語の三字は原頁画像で読みました。撮影日と中国語版の刊行年は今回確定していません。英語版にある刊行管理コードから、中国語版も同年だと推定することは控えます。
写真説明は地名の使用例を残していますが、都市全体の風景や産業を代表する写真だとまでは言えません。撮影地点の詳しい位置も未確認です。ここでは、FAOがその場所をどう呼んでいるかを採用の根拠にします。
出身地を示す「策维埃市」
もう一つ、都市であることを明示する本文用例があります。『人民日報』2022年10月9日付、第3面の王丹記者による「“示范中心就是我的家”」です。
記事は、多哥の農業技術示範センターに関わる人々を紹介しています。その中で、研修を受けた農家の出身地を**「家乡位于策维埃市」**と記しています。「市」を伴い、策维埃そのものを町の名として使った文です。紙面左下の記事を原紙PDFの画像とテキストで照合しました。
同じ記事にはカラ出身の人物も登場します。一方、センターの所在地として本文が挙げるのは桑盖拉地区です。研修参加者の出身地と研修施設の所在地は別なので、ツェビエをセンターの所在地に置き換えることはしません。
FAOの写真説明と人民日報の本文は、いずれも中国語での既存用例です。中国語圏全体で唯一の標準形であることや、日本語で慣用の漢字都市名であることまで証明する資料ではありません。台湾など他の地域の公的用例は、今回の採用根拠には加えていません。
二字に縮めるか、三字を保つか
策维埃
FAOの公的資料と人民日報の都市直接用例で確認できる三字形です。本誌の二字・三字という標準の範囲に収まり、資料の形を保ったまま採れます。今回はこの三字を暫定案とします。
二字への短縮
今回の資料には、二字へ短縮してツェビエを指す用例は確認できませんでした。一字を落とせば、本誌が別の表記を作ることになります。比較のためだけに新しい二字形を掲げず、確認できた三字を保ちます。
「维」を日本語で使う「維」に替えることも可能ですが、それは字体を調整する別の判断です。今回の制定案は確認資料の策维埃をそのまま採り、調整形を既存の日本語用例として扱いません。
また、「策」「维」「埃」の字義をつないで町の特色や語源を説明する根拠はありません。本稿の「ツェビエ」は日本語資料で確認した都市名であり、三字の日本語での慣用読みを実証したという意味ではありません。
都市人口と、別の行政区域
INSEEDの『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』は、表紙に2023年12月とあります。表3.21、印刷33頁(PDF51頁)のTsévié行は、男性3万6,326人、女性4万535人、合計7万6,861人です。男女の合計も一致します。
人口の年は、都市の居住人口を示す表題にある2022年です。年鑑の刊行年や現在の人口とは分けます。前号のDapaong、前々号のKaraも同じ表にあり、同じ年・同じ表の都市別集計として読み継げます。
表は翌頁へ続き、印刷34頁(PDF52頁)の末尾に、INSEEDの第5回人口・住宅国勢調査(RGPH 5)、人口の空間分布、2022年という出典が記されています。該当行、表題、続頁の出典をテキストと原頁画像で照合しました。
ここで採るのはTséviéの都市別人口です。ジオ県全域や、自治体全域の人口へ置き換えるものではありません。集計対象の都市境界と自治体境界との対応、年鑑が参照する別冊報告書の境界図は未確認です。
位置の目安は、GeoNamesのTsévié、識別番号2363534の北緯6.426111度・東経1.213333度です。取得した検索結果HTMLで、第一級行政区域の庁所在地という項目の種類と座標を確認しました。同じ検索結果にある、Tséviéを含む別名を持つZioの行政区域項目2363533、別集落のKodji Tsévié 2365956とは区別しています。
この都市点は人口集計区域の境界を示しません。また、外務省の基礎データが記すトーゴの首都はロメです。行政区域の庁所在地という分類を、国の首都という意味には読み替えません。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
ツェビエ
所属国
トーゴ
暫定制定都市名
策维埃――既
制定状態
暫定制定・日本語の歴史的漢字表記と選字の経緯は継続調査
「既」は、中国語資料に既存の都市直接用例があることを示します。その三字を日本語の都市索引に採るのは、万国漢字志の暫定的な提案です。
踏査日程にあったカタカナと、写真説明にあった漢字。今回の町は、どちらも資料の本文や説明から確かめることができました。異なる言語で残る名前を、出典ごとの役割を保って並べることにします。
採らなかった表記と未解決点
根拠を示せない二字への短縮形、未確認の日本語漢字形は採りませんでした。日本語の歴史的漢字表記、漢字形の初出と選字者、現地名の語源と命名者は未確認です。
FAO中国語版の刊行年と写真の撮影日・撮影地点、都市人口の詳細な集計境界も継続調査とします。今回の写真説明や報道記事から、現在の飼育状況や農業生産量まで確定したとはしません。
参考資料
- JICA『トーゴロジスティクス回廊開発・整備計画策定調査 詳細計画策定調査報告書』、2012年4月、印刷2頁(PDF12頁)、1-5「日程」の4月7日・8日。日本語のツェビエと既刊都市の用例をテキスト・原頁画像で照合
- FAO『为城市供应食物』、家畜を扱う分冊、配布PDF第2頁、左下の写真説明「多哥策维埃」。原頁画像で漢字を確認。中国語版の刊行年・撮影日は未確定
- FAO『Food for the Cities』、PDF第8頁、対応写真と説明のTsevié, Togo。中国語版との地名の対応をテキスト・原頁画像で照合
- 王丹「“示范中心就是我的家”」、『人民日報』2022年10月9日、第3面左下。出身地を示す策维埃市と施設の所在地をテキスト・原紙画像で照合
- INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』、2023年12月、表3.21、印刷33~34頁(PDF51~52頁)。Tsévié行の男女別・合計人口、年、表題と続頁の出典をテキスト・原頁画像で照合
- GeoNames・トーゴのTsevie検索結果、都市項目2363534。取得した掲載HTMLで都市の種類と座標を確認し、行政区域・別集落と区別
- 外務省「トーゴ共和国基礎データ」、一般事情・首都ロメ
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。
都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。
次回予告|都市篇 第九十号
次回の都市は調整中です。今回の都市人口表や踏査記録にある未収録都市も候補とし、日本語名と漢字の都市直接用例を確かめてから選びます。
