万国漢字志

都市篇 · スペイン

万国漢字志 都市篇 第三百四十一号|バレンシア――València と「瓦伦西亚」を結ぶ――

現代の機関用例「瓦伦西亚」を検討し、日本語用の「瓦倫西亜」を暫定提案する。


アクセント記号と、漢字の字体

スペイン観光公式サイトの日本語案内は、「バレンシア」に Valencia-València を添えています。提供されたINE人口表では València。中国の在スペイン大使館経済商務処の案内には「瓦伦西亚(Valencia)」とあります。違う文字体系の名を同じ都市へ結びつけるには、似た音だけでなく資料の対応を見る必要があります。


歴史表記

バレンシア市の歴史ページは、ローマ共和政期に都市が鋳造した貨幣の説明で Valentia の名を使っています。確認したのは市による現代の解説文と写真説明であり、貨幣上の文字を独立して判読したわけではありません。古代の綴りと現在の自治体名を結ぶ説明として参照します。

日本語の歴史的な漢字表記は、現時点では原典画像で確認できていません。また、Valentia から現在の綴りまでの全変化や、中世の各言語における表記は要継続調査です。古代の都市の範囲を現代の municipio の境界と同一視しません。


日本語での用例

スペイン観光公式サイトの日本語都市案内は、見出しに「バレンシア」、地名欄に Valencia-València と記します。今回はこの日本語名と、INEコード46250の València を対応させます。アクセントを持つ綴りを、別の都市を表す名前として重複計上はしません。ただし、法令による正式名称の変遷をこの観光案内だけで説明することはできません。


中国語圏その他の表記との比較

在スペイン中国大使館経済商務処の「主要城市」(2021年6月30日)には「〖瓦伦西亚(Valencia)〗」とあります。これは機関自身が用いた現代中国語の表記です。ページにある古い人口値は本稿へ混ぜません。

本誌は「伦」を「倫」、「亚」を日本語の新字体「亜」へ調整し、「瓦倫西亜」を案とします。瓦と西は保ちます。原文の「瓦伦西亚」は出典を示すときにはそのまま引用します。繁体字への機械的な変換なら亞という形も考えられますが、本稿の採用形は日本語の亜です。調整形を台湾等の確認済み用例とはしません。


二文字・三文字案の比較

瓦亜

両端だけを残す二字案です。中間の二字を失うので、原文との対応も「バレンシア」の中ほどの音も示しにくくなります。実例ではなく、本誌が比較用に作った省略案です。

瓦倫亜

西を省く三字案です。字数は標準内ですが、地名の「シ」に対応させられる部分が落ちます。今回の一次資料にこの短縮形は確認していません。

瓦倫西亜

四字を保って、日本語で使う字形へ調整する案です。本稿はこちらを採ります。日本語では瓦を「ガ」、倫を「リン」、西を「セイ」「サイ」などと読むため、音読みをつないでも「バレンシア」にはなりません。字の並びを保つことと、日本語で読めることは別であり、カナを併記します。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

バレンシア(València/Valencia)

所属国

スペイン

暫定制定都市名

瓦倫西亜――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

既存の「瓦伦西亚」をもとに伦→倫、亚→亜と調整するため、「改」とします。二・三字への短縮で失う要素を避ける例外として四字を保ちます。日本語の伝統的な当て字として認定した表記ではありません。

INE年次センサスの2025年1月1日値では、人口は841,558人。コード46250の municipio 全域の通常居住者を対象とし、同名の県、自治州、都市圏全体の人口ではありません。


採らなかった表記と未解決点

瓦亜・瓦倫亜は省略案として残します。亞を用いる「瓦倫西亞」は今回の日本語用の採用形とせず、簡体字の原文「瓦伦西亚」は引用で保存します。どちらの形も、未確認の地域用例や歴史的先例を補って作ることはしません。

漢字表記の初出と命名者、日本語古資料における用例、都市名の法的な改称の経緯は未確定です。歴史ページの Valentia、観光案内の Valencia-València、人口表のコード46250を、それぞれの資料が保証する範囲で扱います。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第三百四十二号

次号の題材は、人口と都市の同一性の確認を経て案内します。