万国漢字志

都市篇 · スペイン

万国漢字志 都市篇 第三百五十一号|バジャドリード――大教堂の案内から六字を整える――

州政府の中国語観光案内にある六字を、日本語用の字形へ調整する。


大教堂の名を手がかりに

カスティージャ・イ・レオン州政府の中国語観光ページには、「巴利亚多利德大教堂」という見出しがあります。所在地は Valladolid。建物の案内から、漢字の地名と現地の綴りの対応を確かめられます。

この六字を日本語の漢字名として用いるなら、そのまま写すだけでは済みません。今回は構成を保ち、字体を整える案を考えます。


歴史表記

日本語の古い地図や地理書に現れる漢字表記は、今回、原典画像で確認できていません。州政府のページが歴史ある建築を紹介していても、中国語の地名がその時代からあった証拠にはなりません。

地名の語源、最古の綴り、漢字表記の初出も要継続調査です。本稿は現在の機関用例から組み立てる暫定案として扱います。


日本語での用例

スペイン観光公式サイトの都市紹介は、「バジャドリード」を見出しにし、Valladolid を添えています。本誌の現代日本語都市名もこの形を採ります。同じページの地理欄には短い「バジャドリ」もありますが、都市見出しに合わせます。

確認できたのはカナの使用です。今回の漢字案が日本語で広く定着しているとは言えません。


中国語圏その他の表記との比較

州政府の観光案内は、見出しに「巴利亚多利德大教堂」、本文に市を示す「巴利亚多利德市」を用います。住所欄の「C/ Arribas, 1. Valladolid. Valladolid」と併せて、建物とその所在都市を照合できます。同名の県そのものを漢字採用の対象にするわけではありません。

日本語用の案では、亚を亜、德を徳へ調整し、「巴利亜多利徳」とします。残りの四字は保ちます。引用の「巴利亚多利德」は原文の字形を保存し、調整後の六字を州政府が使っている形とは記しません。他の中国語圏での独立した使用例は今回未確認です。


二文字・三文字案の比較

巴徳

両端の二字を残す案です。中央の四字がなくなり、元の構成をほとんど追えなくなります。歴史的な略称ではなく、本誌の比較用の省略案です。

巴多徳

中央に多を残す三字案です。二字案より元の形をたどれますが、利・亜・利に相当する要素は落ちます。字数を減らすことで、読みが明瞭になるわけでもありません。

巴利亜多利徳

六字を保ち、字体だけを整える案です。二・三字を標準とする本誌の例外になりますが、出典との対応を優先してこちらを採ります。普通の音読みをつないでも「バジャドリード」にはならず、長母音や語末の音も字だけでは決まりません。カナを添える必要があります。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

バジャドリード(Valladolid)

所属国

スペイン

暫定制定都市名

巴利亜多利徳――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

亚→亜、德→徳と日本語の字形へ調整したため「改」とします。六字のままなのは、短縮で失う要素が多いためです。日本語の伝統的当て字を認定するものではありません。

INE年次センサスの2025年1月1日値は301,798人。対象はコード47186の municipio 全域の通常居住者であり、同名の県や広い都市圏の人口ではありません。


採らなかった表記と未解決点

巴徳・巴多徳は比較案にとどめ、原資料の六字は引用として残します。「巴利亞多利德」のように別の字体へ置き換える案と、今回の日本語用の案も区別します。

漢字表記の命名者、初出、日本語史料の先例は未確定です。出典との対応を保つことと、日本語で無理なく読めることが一致しない点は残ります。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇

次号の題材は、人口と都市の同一性の確認を経て案内します。