万国漢字志

都市篇 · イタリア

万国漢字志 都市篇 第三百三十四号|ヴィチェンツァ――回廊が取り巻く広場の建物と「維琴察」――

パッラーディオの回廊が囲む中世の建物を訪ね、現代中国語用例「维琴察」の三字を検討する。採用名は字形を調整した「維琴察」(改)とする。


回廊が取り巻く広場の建物と「維琴察」

ヴィチェンツァのシニョーリ広場に面するバシリカ・パッラディアーナには、アンドレーア・パッラーディオが設計した回廊があります。市の解説を読むと、回廊が囲むのは中世のパラッツォ・デッラ・ラジョーネです。一つの建物の内と外に、異なる時代の市の姿が残っています。


歴史表記

市の解説は、現在の回廊で囲まれた場所に、13世紀後半から市政の建物があったと記します。ユネスコの登録資料でも、パッラーディオの建築が中世の街並みに組み込まれたことが述べられています。日本語の歴史的な漢字表記は、原典画像を確認できていません。


日本語での用例

在ミラノ日本国総領事館の2012年の活動報告には、文化団体「御飯」と「ヴィチェンツァ市」が共催した日本文化行事「春の風」が載っています。


中国語圏その他の表記との比較

中国駐イタリア大使館は、2026年の北京舞踊学院のイタリア巡演を報告する際、開催地の一つを「维琴察」と記しています。市自身の案内では Vicenza です。


二文字・三文字案の比較

次の案では、短縮したときにどの音や字形の手掛かりが残るかを比べます。

维察

中の琴を省く二字案です。短くなりますが、巡演報告で地名を探すときに字列が一致しません。

維琴察

先頭の簡体字「维」を日本語でも用いる「維」へ調整した三字を本誌は採ります。三字の対応は追えますが、今回引いた大使館の資料とは先頭の字形が変わります。

维琴察

大使館の資料にある引用字形は「维琴察」です。本誌の採用形「維琴察」と区別します。琴の日本語の字音「キン」から「チェン」は導きにくく、末尾の察の字音「サツ」も「ツァ」とは異なります。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ヴィチェンツァ(Vicenza)

所属国

イタリア

暫定制定都市名

維琴察――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

「改」は、現代の用例「维琴察」を土台に、维→維と採用字形を本誌が調整したことを示します。出典の引用には元の字形を残します。日本語の伝統的な漢字表記として認定するものではなく、「ヴィチェンツァ」の読みを添えます。

ISTATの2024年人口収支確定表では、2024年12月31日末(2025年1月1日初に相当)の国勢調査調整後の住民人口は110,468人です。自治体コード024116のコムーネ全域を対象とします。同名の県や、ヴェネト州内の各地に広がるパッラーディオの別荘を含む世界遺産の範囲とは区別します。


採らなかった表記と未解決点

维察は比較案にとどめ、維琴察を本誌の字形調整案として採ります。資料の引用には簡体字の「维琴察」を保ちます。別の字形がどこで使われたか、日本語の歴史的用例があるかは、それぞれ資料を確かめます。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第三百三十五号

人口選定資料で次の掲載順に当たるのはボルツァーノです。