万国漢字志

都市篇 · スペイン

万国漢字志 都市篇 第三百五十五号|ビトリア=ガステイス――名前の重なりと「維多利」――

ビトリア=ガステイスの地名と現代中国語の用例を比較し、本誌の暫定案を考える。


一つの都市、異なる名前

ビトリア=ガステイスはスペインの自治体 Vitoria-Gasteiz を指します。現地の名、日本語での呼び名、別の言語による漢字表記を照らし合わせると、一つの場所にも異なる呼び方が重なっていることが分かります。


歴史表記

市の説明によれば、1181年にナバラ王サンチョ6世は、Gasteiz の集落に Nueva Victoria の名で特許状を与えました。市のページには特許状のスペイン語訳も掲載されています。羊皮紙原本の字形は実見していません。 日本語の歴史的な漢字表記も、現時点では原典未確認です。歴史解説に見えるラテン文字の地名と、後世の漢字用例を混同しないようにします。


日本語での用例

スペイン観光公式サイトの日本語版を参照し、本稿では「ビトリア=ガステイス」と呼びます。現地語の綴りや別の言語による名前を、そのまま別の自治体として数えるわけではありません。


中国語圏その他の表記との比較

済南市の2026年のバスク自治州紹介は、州都を「维多利亚—加斯泰斯」と記します。済南市は同州との友好協力関係も記しており、これは同市による現代中国語の使用例です。

本誌の採用案は「維多利」です。出典の表記「维多利亚—加斯泰斯」から、「维」を「維」に改め、前半の「维多利亚」から末尾の「亚」と後半を省きました。 こうした変更を伴うので、確認した字形のままの既存表記を意味する「既」ではなく「改」とします。


二文字・三文字案の比較

維多利

出典の表記を手がかりに、日本語で用いる字形と三字の長さを優先した案です。短い一方で、元の綴りや発音を完全には表せません。

維多利亜

原表記の前半を日本語で用いる字形に直し、四字で残す案です。元の地名との対応は分かりやすい一方、後半の Gasteiz は示しません。

美都里

日本語のビ・ト・リを手がかりに本誌が作った三字案です。既存用例は確認していません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ビトリア=ガステイス(Vitoria-Gasteiz)

所属国

スペイン

暫定制定都市名

維多利――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

INEの年次センサス表68065では、2025年1月1日の通常居住者人口は 260,402人 です。自治体コード 01059、Vitoria-Gasteiz の municipio 全域を対象とし、中心市街地だけや周辺自治体を合算した都市圏は数えていません。自治体の中の地区や集落も、別の自治体として重ねて数えません。


採らなかった表記と未解決点

「維多利」は前半だけを縮めたため、他の Victoria と混同し得ます。採用形だけからガステイスを読めず、常にカナと正式名を添えます。 漢字の歴史的用例の原典と、現代表記の初出・命名者は確認できていません。比較のために作った案を、歴史上使われた表記とは扱いません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇

第三百五十六号はア・コルーニャを取り上げます。