万国漢字志

都市篇 · トーゴ

万国漢字志 都市篇 第百二号|ヴォガン――寄贈先の名前と写真の説明を照合する

トーゴ南部のヴォガン。図書寄贈の日本語報告、教育省の学校配置、新華社の中国語・英語写真説明を照合する。2022年都市人口24,983人と居住地座標を確認し、中国語の沃冈を参考に、日本語の制定名として二字の沃岡を新たに選定する。

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人口表で残っていた一行

前号のカンデから、トーゴの都市人口表へ戻ります。既刊で取り上げた町を照合すると、表の上から次に残っているのはVoganです。ニャムトゥグとバフィロの間に、2022年の都市人口24,983人とあります。

第九十六号のバフィロでは、この一行を越えて北部の手工業の記録へ進みました。今回は戻って、トーゴ南部のヴォガンを取り上げます。日本語の手掛かりは図書寄贈の報告、中国語の手掛かりは木彫を買い求める場面の写真説明です。

二つの資料は、どちらも町の名前を調べるために書かれたものではありません。本を届けた相手、写真を撮った場所を記す短い言葉から、都市名を確かめていきます。


日本語の「ヴォガン」は学校名の中にある

金岡保之「アフリカ・トーゴ共和国における国際協力・支援について~日本トーゴ友好協会の活動報告~」は、宮崎大学地域資源創成学部紀要第2号の19~33頁に収められています。冒頭に2019年1月9日と記され、著者は協会の設立者兼会長と名乗っています。活動当事者自身による日本語報告です。

印刷24頁(論文単独PDF6頁)の「3-2、教育機関への図書寄贈プロジェクト」では、2014年12月20~23日の活動を説明し、寄贈先の一つにヴォガン高校を挙げています。原頁画像で文字を確認しました。四校の高校生合計600人という記述であり、ヴォガン一校だけの人数ではありません。

ここで直接確かめられる日本語形は学校名です。都市そのものを「ヴォガン市」と書いた文ではないため、学校名だけで都市への対応を済ませることはできません。

そこで、トーゴ教育省の2026年8月10日付の学校配置記事を照合します。Maritimeの段落は、Voganの科学教育校をlycée Vogan Iの敷地に置くと説明し、末尾の地域別一覧にもVoganを挙げています。地域名と学校名の双方にVoganが使われていることを、設置を所管する省の本文で確認できます。

本稿では、この対応を踏まえて、活動報告に実在するカタカナのヴォガンを都市の見出し名として用います。これは本誌による資料の照合と表記の選択です。2014年の寄贈先が現在のVogan Iと同一校か、Vogan IIその他の学校かは未確定であり、日本語名の公的な統一形も確認していません。教育省の記事は配置の発表であって、実際の開校を現認した記録としては扱いません。


湖名と道路の備考を混ぜない

日本語資料には、似た名が別の対象にも現れます。JICAの1992年4月『漁業振興計画事前調査報告書』の印刷6頁にあるヴォガン湖は、ラグーン漁業の説明です。この湖の名前を、そのまま都市の日本語用例に数えることはしません。

既刊のアニエやノッツェで使ったJICAの2012年4月の物流回廊調査報告書にもVoganがあります。印刷13頁(PDF23頁)、表2-3の08:15の行です。原頁では通過点がAntoin、備考がVoganとリン鉱石採掘場への分岐点の説明になっています。

Voganが同じ道路調査の中に現れる点は、既刊との接続になります。ただし、備考の地名を通過点欄のAntoinと同一視したり、採掘場の位置を都市の代表座標として使ったりすることはできません。この表にもカタカナのヴォガンはなく、日本語名の根拠は前節の活動報告に置きます。道路の記録は当時のもので、現在の路面状態を示すものではありません。


歴史的な日本語漢字表記は未確認

今回確認した日本語資料の形は、学校名に含まれるカタカナです。都市を漢字で記した日本語の歴史資料・古地図、制定に採れる日本語漢字の先行使用・提案は、現時点では原典未確認です。

後述する中国語の沃冈も、日本語の歴史的漢字表記には数えません。日本語用例が見つからなかったことを、不存在の証明として扱うこともできません。古い地理書や地図の画像本文を含め、継続調査とします。


写真説明の「沃冈市」を英語版と照合する

新華社の2019年11月6日付の現地取材記事には、沃冈市という中国語形があります。木彫を買い求める謝燕申と地元住民を写した、図文番号(4)の写真説明です。本文は撮影場所をトーゴの沃冈市の阿雅塔村と記しています。

漢字形の根拠は記事の題名ではなく、この所在地を示す説明です。博物館の所在地ロメや、別の写真説明にあるアネホと混ぜずに読みます。

翌11月7日付の英語写真記事、第4頁では、謝燕申が地元の人と話す場所をVogan, Togo、撮影日を2019年10月29日としています。撮影者も中国語版の王騰に対応するWang Tengです。両言語の記事を取得し、人物・撮影日・場所・撮影者の対応を照合しました。

これによって、沃冈がVoganに対応する中国語の都市名用例であることを確かめます。阿雅塔村の行政上の所属範囲や、写真の場所が2022年の都市人口集計区域に入るかまでは、この説明から確定しません。取材先の一場面を、町全体の主要産業や現在の暮らしの説明へ広げることも控えます。

これは現地を取材した通信社自身の地名使用です。ただし、中国語圏全体で唯一の標準形であること、表記の初出や選字者、台湾の公的標準は未確認です。


24,983人と町の位置

INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21、印刷33頁(PDF51頁)は、2022年のトーゴ各都市の居住人口を男女別に示しています。Vogan行は男性11,756人、女性13,227人、合計24,983人です。男女の和も合計欄に一致します。

表題・列見出し・Vogan行を原頁画像で確認しました。続く**印刷34頁(PDF52頁)**の表末尾には、INSEEDの第5回人口・住宅国勢調査(RGPH 5)、2022年の人口空間分布資料という出典があります。

本稿の数値は、この表がVoganという都市として集計した居住人口です。Vo県全体、自治体全域、学校の生徒数、写真に出る村の人口とは区別します。都市の詳しい統計境界と行政境界との対応は未確定です。2022年の値を現在人口とも呼びません。

GeoNamesのVogan(2363490)は、トーゴのMaritimeに属する居住地、分類P PPLです。代表座標は北緯6.33333度、東経1.53333度。これは町の位置を示す点であり、学校・採掘場・写真の撮影地点や都市境界の座標ではありません。GeoNamesの付属人口は今回の国勢調査値と異なるため、人口の出典には使いません。

外務省のトーゴ基礎データが示す国の首都はロメです。ヴォガンは国の首都ではありません。


二文字・三文字案の比較

沃岡

中国語で確認した沃冈を参考に、冈に対応する岡を用いて、日本語の制定名には沃岡を置く案です。新華社の掲載形は沃冈であり、沃岡がそのまま掲載されていたと書くことはできません。

二字で収まり、確認した中国語形との対応を追いやすい点を評価します。一方、日本語の通常の字音でヴォガンが再現できるわけではありません。漢字ペディアの沃はヨクなど、岡は音にコウ、訓におかを載せています。本誌では二字全体に都市名ヴォガンを対応させる当て字として扱い、慣用の読みが既に成立しているとは主張しません。

沃の肥えた土地、岡の小高い土地という字義も、町の地形や地名の語源の説明には使いません。写真の木彫や寄贈の活動から、選字の由来を補う根拠もありません。

慕賀恩

三字の比較試案として、慕賀恩を検討します。これは本誌が比較のために組んだ形であり、史料の掲載形でも先行用例でもありません。慕のボ、賀のガ、恩のオンを並べると、通常の字音はボ・ガ・オンとなります。

ヴォ・ガ・ンの三拍に一字ずつ割り当てたい試案ですが、ボとヴォは同じ表記ではなく、オンも撥音ンだけではありません。この三字で日本語名の音をそのまま保存できるとは言えず、字音の一部を落とす読み方を追加する必要があります。三字にするだけでは、読みの問題は解決しません。

そこで今回は、根拠のある中国語形に対応する二字の沃岡を優先します。字音との隔たりは明記し、裏づけのない三字形を既存名のように定着させることは見送ります。慕賀恩の字義を国際協力や謝恩の物語に結び付けることもしません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ヴォガン

原綴り・所属国

Vogan/トーゴ

中国語の確認形

沃冈――新華社の写真説明にある都市直接用例。

暫定制定都市名


沃岡

読み

ヴォガン(本誌が都市名を対応させる当て字)

制定区分

沃岡――創

制定状態

暫定制定・原典継続調査

編纂綱領第三条・第五条・第九条に従い、日本語の用例、中国語の確認形、本誌の選定を分けます。日本語の歴史的漢字表記や漢字の先行使用・提案は原典未確認であり、中国語の沃冈の存在だけでは、日本語の「史」「既」を認定できません。

今回は、都市名の中英対照が取れた二字形を参考に、沃岡を日本語の制定名として新たに選定するため、「創」を暫定的に用います。漢字形の発想を本誌が無から作ったという意味ではありません。冈から岡への対応を示していますが、日本語の既存漢字都市名を現代向けに改めたと認定する資料はなく、そのような意味の「改」とも区別します。

単なる日本語用例の未確認から自動的に付ける区分ではなく、取材記事による都市同定、二字の簡潔さ、三字試案の読みの問題を比較した判断です。より適切な日本語の先行用例が確認できれば、表記と区分を再検討します。


採らなかった表記と未解決点

沃冈は中国語の掲載形として保存します。三字の慕賀恩は読みの負担があり、既存用例でもないため採りません。一字略称は制定しません。

日本語の歴史的漢字表記と漢字の先行使用・提案、中国語形の初出と選字者、台湾の公的標準、地名の語源と命名者は未確認です。日本語名の公的な統一形、寄贈先の高校の厳密な同定、写真説明の村と都市集計区域の関係、都市の統計境界も継続調査とします。

学校名に含まれるカタカナを都市の見出しへ採ることと、二字の漢字にその読みを対応させることは、いずれも本誌の判断です。その判断を資料に書かれた事実へ戻してしまわないよう、確認できた語と、選んだ案を並べて残します。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第百三号

次回もトーゴの都市人口表に載る未収録都市を候補に、日本語名と漢字形の資料を確認してから選びます。