万国漢字志

都市篇 · ドイツ

万国漢字志 都市篇 第二百二十七号|ヴィースバーデン――住所欄のカタカナと「威斯巴登」――

1998年の金融監督庁発表にあるヴィースバーデン市を確認。中国総領事館の威斯巴登と比較し、州都と国の首都も分けて記す。


銀行の本店所在地に残る市名

1998年の金融監督庁の発表を読むと、外国銀行の本店所在地の欄にヘッセン州ヴィースバーデン市とあります。観光案内ではなく、住所を特定するために書かれた都市名です。

中国総領事館の報告では、ヘッセン州の州都は威斯巴登。日本語のカタカナと中国語の四字が、どの町を指すのかを照合できます。その上で本誌は、四字を省略せず、読みを添える案を採ります。


歴史表記

ヴィースバーデンの日本語の歴史的な漢字表記は、今回の調査では原典未確認です。 1998年の公的な電子資料で確認できたのはカタカナで、威斯巴登という漢字ではありません。

年代のある資料を見つけたことと、漢字表記を見つけたことは同じではありません。1998年を日本語名や漢字名の初出年とすることもできません。威斯巴登の初出、選字者、日本への伝来経路は未確認です。

また、州都であることは市の行政上の位置づけであり、漢字の由来を説明するものではありません。国の首都と州都を混同せずに扱います。


日本語での用例

金融監督庁の「在日外国銀行支店に対する銀行業免許の付与について」は、平成10年12月11日、すなわち1998年12月11日の新聞発表です。参考欄のデプファ銀行の概要に、ドイツ連邦共和国ヘッセン州ヴィースバーデン市という本店所在地の記載があります。

これは当時の発表に書かれた住所です。本誌は市名の日本語用例として参照しており、銀行の現在の所在地を示す資料としては扱いません。銀行の設立年など、同じ表の別項目を市名の成立年へ読み替えることもしません。

国立国会図書館の「ドイツ連邦共和国-州政府サイト」は2023年2月27日更新。州と州都を並べる一覧で、Hessenに対してWiesbaden、ヴィースバーデンと記しています。この日独の対応も確かめ、本誌の現代日本語都市名をヴィースバーデンとします。


中国語圏その他の表記との比較

中国駐フランクフルト総領事館の「黄昳扬总领事出席黑森州政府国务部长为领团代表举办的招待会」は、2024年4月22日表示の報告です。本文も同月22日の訪問を述べ、場所を黒森州の州都威斯巴登と記しています。

URLの途中には20240423という部分がありますが、表示日とは分けます。本誌が用例の根拠とするのは、実際に読める本文の四字です。会合の日付から、四字が選ばれた時期を推定してはいません。

原文の威斯巴登を、本誌案では一字も変更しません。日本語資料のヴィースバーデンと対応させても、現代中国語の形が日本語の歴史漢字に変わるわけではありません。


二文字・三文字案の比較

威登

四字の両端を取り、斯巴を省く二字案です。本誌が比較のために組んだ形で、確認済みの都市略記ではありません。原文との対応をたどるとき、中央の二字が失われます。

普通の日本語の音読みでこの二字を読んでも、ヴィースバーデンの名全体にはなりません。短くしただけで、現地の発音に近づくとする根拠もありません。

威巴登

斯だけを省く三字案です。威登より文字を残せますが、斯を省略してよいとする用例は今回確認できませんでした。読みの長さと漢字の数を一対一に合わせようとしても、日本語の音読みと都市名の隔たりは解消しません。

三字標準に収まる利点と、資料にない短縮を加える欠点を比べ、今回は採りません。

威斯巴登

現認した四字をそのまま保持する案です。日本語の住所資料、日独対応の一覧、中国語報告を見比べる際、最後の資料の文字列を変えずに照合できます。

二字・三字を標準とする本誌では四字の例外です。四字を並べても、日本語の音読みだけでヴィースバーデンとは読めません。既存形を残すことを発音の再現と取り違えず、ヴィースバーデンの読みを添えます。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ヴィースバーデン

所属国

ドイツ

確認した現代中国語表記

威斯巴登

暫定制定都市名

威斯巴登――既

制定状態

暫定制定・原典継続調査

既存の現代中国語形を無変更で採るため「既」です。日本語の歴史表記としての「史」や、本誌独自の新しい選字としての「創」とは区別します。

人口はDestatisの自治体一覧年次版による2025年12月31日現在288,584人。2022年国勢調査を基礎とする公式人口更新統計で、人口・境界とも同日、2026年8月版です。対象はWiesbaden, Landeshauptstadtの自治体全体で、ヘッセン州全体や周辺都市圏の人口ではありません。

ヘッセン州の州都ですが、ドイツの国の首都はベルリンです。この二つの地位を分けて記録します。


採らなかった表記と未解決点

威登と威巴登は未確認の先例を補った形ではなく、今回の本誌の短縮比較案です。漢字数だけなら扱いやすくなりますが、出典にある四字から何を削ったかという追加説明が必要になります。

住所欄の市名には、その場所を識別する役割があります。一方、その用例だけから読みの唯一の標準や初出を決めることはできません。金融監督庁の資料は1998年の日本語形、国立国会図書館の一覧は更新時点の日独対応、中国総領事館の報告は現代中国語形の証拠として、それぞれ使います。

日本語の歴史漢字、漢字の初出と選字者、短縮形の先例は継続調査です。州都という説明や国の首都についての資料から、命名の由来を付け加えないようにします。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第二百二十八号

次回はメンヒェングラートバッハを予定しています。この日本語形は、下関市立大学のニーダーライン応用科学大学との協定締結報告にも見られます。掲載順に沿って、都市名と漢字表記の根拠を調べます。