短くする前に、四字を見ておく
スイス政府観光局の日本語頁には、**ヴィンタートゥール(ヴィンタートゥーア)**と二つの形が並んでいます。別の日本語資料ではウィンターツール。カタカナでも表し方が一つに決まらない都市です。
同じ観光局の中国語頁では、簡体字で温特图尔、繁体字で溫特圖爾という四字になります。本稿は、最初に挙げた日本語の都市案内に合わせてヴィンタートゥールを見出しの名とし、ほかの形も使用例として残します。
漢字の暫定案は、四字の対応を残して日本の字体へ寄せる温特図爾。二字・三字に短くする案と比較したうえで、今回は四字を残す理由を考えます。
歴史表記
ヴィンタートゥールの日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 今回の四字は、現在の中国語観光案内で確認したものです。それを日本の古い地図や地理書の表記として紹介することはしません。
観光頁には都市の産業や文化の歴史も書かれています。しかし、歴史について述べる現在の文章を、昔の漢字名が実際に使われた証拠に置き換えることはできません。
本誌が提案する温特図爾も、今回発見した日本語の歴史表記ではありません。
日本語での用例
スイス政府観光局の都市紹介頁は、見出しにヴィンタートゥールを使っています。本文の「ヴィンタートゥールとは」には、**ヴィンタートゥール(ヴィンタートゥーア)**という形があり、美術館や産業を背景とする文化の紹介が続きます。
この資料は都市そのものを指しています。本稿では、この直接の用例に基づいて現代日本語名をヴィンタートゥールとし、漢字案にもその読みを添えます。ヴィンタートゥーアという別形を誤記として消すことはしません。
さらに、日本キスラーの自社紹介には、親会社の所在地としてスイス・ウィンターツール市という用例があります。こちらも実際の日本語使用として残します。ただし、一つの表記だけが日本語全体の唯一の正解だと認定する資料ではありません。
いずれのカタカナ用例も、日本語で温特図爾という漢字名が使われていることを示すものではありません。
中国語圏その他の表記との比較
スイス政府観光局の簡体字頁は、見出しを温特图尔とし、その次にWinterthurを置いています。繁体字頁では、見出しが溫特圖爾 Winterthurです。
ここで確認できるのは、同局の二つの中国語版での実使用です。中国語圏のあらゆる場所で同じ形だけが使われると調べたわけではなく、日本語の既存漢字名としての裏付けでもありません。
溫特圖爾をそのまま掲げることと、日本の字体に寄せて温特図爾とすることは、別の選択です。本誌案では溫を温、圖を図へ改め、特と爾を残します。確認した中国語の形そのものと、本誌による調整後の形を区別します。
二文字・三文字案の比較
温図
中国語の四字から特と爾を省き、日本の字体へ寄せる二字の改案です。文字数は短くなりますが、原形の多くを落とし、ヴィンタートゥールという名への手掛かりも少なくなります。
今回、この二字を都市の既存略称として確認したわけではありません。単に字体を整えた案ではなく、本誌による大きな省略を含む案です。
温特爾
四字から図に当たる部分を落とす三字の改案です。冒頭と末尾の字は残りますが、原形の途中を一つ抜くことになります。三字の一般的な日本語の字音から、ヴィンタートゥールを自然に読めるわけでもありません。
二字・三字を標準とするためだけにこの形へ縮めると、省いた部分を説明する負担が残ります。
維多留
ヴィ・ター・ルという日本語名の断片を手掛かりに、別の字を選ぶ三字の創案です。中国語四字の字体を変えたものではなく、今回の資料にある都市名でもありません。
ヴィンのン、長音、トゥーの部分を落としており、維・留の通常の字音もヴィ・ルと同じではありません。三字に収まる利点はありますが、読みを復元する手掛かりとしては弱い案です。
温特図爾
既存の中国語四字形との対応を一字ずつ残し、日本の字体へ寄せる本誌の改案です。短縮案で落とした箇所を残せること、どの原形をもとにしたのか追えることを採用理由にします。
四字でも、日本語の音を完全に写せたわけではありません。 温のオン、特のトク、図のズ・ト、爾のジなどの字音を並べても、ヴィンタートゥールにはなりません。四字を残すのは中国語原形との対応を保つためであり、長音やンまで漢字だけで示せたという判断ではありません。カタカナの読みを添えて使うことを条件にします。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
ヴィンタートゥール
所属国
スイス
暫定制定都市名
温特図爾――改
制定状態
暫定制定・原典継続調査
本誌案は、溫特圖爾の二字を日本の字体へ寄せた形です。確認できた中国語表記をもとに実際に調整するため「改」とします。日本語でそのまま使われている漢字名を確認したという「既」ではありません。
都市篇は二字・三字を標準としますが、今回は四字を残します。二字・三字案では原形の文字を省くか、音の断片だけを新しい字に置き換えることになり、今回の資料との対応が弱まるためです。この四字の例外も暫定の判断であり、読みの完全な再現を理由にはしません。
人口はスイス連邦統計庁のSTATPOPによる2025年12月31日現在120,741人。BFS自治体コード0230のWinterthurの常住人口です。同名の地区やチューリヒ州、都市圏の人口を加えたものではありません。使用表の行政範囲は2025年4月6日、データベース表示版はJune2026です。
採らなかった表記と未解決点
温図と温特爾は、本誌が省略を加える比較案です。維多留は、日本語名の一部から新しく文字を選ぶ創案です。いずれも、資料にある既存の都市名としては扱いません。
温特图尔と溫特圖爾は、確認した中国語用例として残します。温特図爾には溫→温・圖→図という変更がありますが、もとの四字をそのまま採る場合には、その変更があったかのように説明できません。
日本語の歴史的漢字表記、四字の初出や選字者は未確定です。日本語の異表記の広がりや現地の音声を全面的に比較した調査でもありません。よりよい日本語用例や歴史原典が得られれば、四字を残す判断と字体の選び方を見直します。
参考資料
- 「ヴィンタートゥール」、スイス政府観光局。「ヴィンタートゥールとは」の本文にヴィンタートゥール(ヴィンタートゥーア)。2026年11月6日閲覧。
- 「日本キスラー合同会社」会社紹介、日本キスラー。スイス・ウィンターツール市の用例を参照。2026年11月6日取得。
- 「温特图尔」簡体字版、瑞士国家旅游局。見出しとWinterthurの対応を確認。2026年11月6日閲覧。
- 「溫特圖爾 Winterthur」繁体字版、瑞士國家旅遊局。現代中国語の用字を確認。2026年11月6日閲覧。
- STATPOP自治体別人口表、スイス連邦統計庁。2025年12月31日の常住人口、行政範囲2025年4月6日、June2026版。保存した公式API応答の自治体0230・人口区分1・国籍/性別/年齢各総数の行を参照。
- 「Political system」、スイス連邦外務当局Presence Switzerland、2026年4月29日表示。ベルンが連邦都市・事実上の首都であることを参照。
- GeoNames:Winterthur、GeoNames、CC BY 4.0。保存済み索引の代表座標点を使用。市域境界や人口を示す資料ではありません。
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。
次回予告|都市篇 第二百九十五号
次の都市はまだ決まっていません。調査が整い次第案内します。今回の確認済み対象を調べたことだけで、地域全体や全世界を一巡したとはしません。
