万国漢字志

都市篇 · トーゴ

万国漢字志 都市篇 第百二十八号|イェゲ――道の途中の村と、小郡の名前――

YéguéはトーゴのBlitta県、Blitta 3自治体にある同名小郡の集落。イェゲは欧文綴りから置く本誌の暫定転写で現地音源未聴取。人口3,472人は2022年の小郡全域。座標はGeoNamesの集落索引点で、村中心・境界は未照合。

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一つの名が、道と区域に現れる

前号フォロでは、村の名を農村道路の起点として読みました。回収した中央州の統計年鑑を少し戻ると、国道27号の欄にLangabou–Yégué–Fre Ghanaという経路があります。今回はこの途中の名、Yéguéを取り上げます。

同じ年鑑の人口表にもYéguéがあります。ただし、その数字は村の人口でしょうか。それとも、村と同じ名を持つ区域の人口でしょうか。

本稿では日本語名をイェゲと暫定的に置き、漢字案を意恵下とします。現地で認められた漢字名ではなく、読みを添えて使う本誌の創案です。都市篇への収録は、独立した市の認定を意味しません。


今回の候補を比べる

既刊の調査から残っていたSangoul系とMatchatomを、まず比較しました。前者にはSANGOUL・Sangoulé・Sangouliという綴りの対応、後者には別地域のAou-Matchatomとの区別が課題として残ります。フォロと道路でつながるBolkatangaも候補ですが、今回読んだ地名データでは集落点を照合できませんでした。近い別綴りや地物の位置を、そのまま借りることはしません。

Yéguéは同じ回収済み年鑑に地図、道路表、小郡別人口表があり、国家個人識別庁ANIDの登録表では小郡名と集落名を別の欄で読めます。既刊ブリッタで扱った、町と行政範囲を区別する問題にもつながります。

Mô県の集落からBlitta県へ調査範囲を移すのは、人口表の次の行だからではありません。道路の経由地と、統計が数える区域を読み分けられることを今回の題材価値としました。


同じ名の小郡と集落

ANIDの中央州登録拠点一覧には、県BLITTA、自治体BLITTA 3、小郡YEGUE、集落YEGUE、施設EPP YEGUEという行があります。同じ小郡欄には、ほかにN'KONKOAなどの集落も並びます。

この表ではYEGUEは一つの学校名だけではなく、集落と小郡の両方に使われています。学校が載っているからといって、その利用者や児童数を村の人口に読み替えることもできません。

INSEED『中央州統計年鑑2022–2023』の印刷42頁の県図では、YEGUEはBlitta 3側、ガーナとの国境に近い西側の区域に記されています。年鑑のアクセント付きの綴りYéguéと、登録表の大文字形YEGUEは、Blitta 3という所属を合わせて照合します。アクセントの有無だけを別の村の根拠にはしません。

この地図は小郡境界などを示す行政図です。文字が置かれた場所を、精密な村中心座標として採ることはしません。


国道の表に載った名前

年鑑の印刷267頁、表3-41は地方公共事業局の道路一覧です。2021年と2022年の欄に、国道27号のLangabou–Yégué–Fre Ghana、67kmが載っています。

67kmはこの欄の経路全体の長さです。「Yéguéから国境まで67km」「村の中の道路が67km」とは読めません。同表が当該年の区分で舗装道路に置いていることも、2026年現在の全区間の路面や通行状態を実見したという意味ではありません。

前号の農村道路表と、今回の国道表では、道路の分類も集計単位も異なります。それでも、道路の名称をたどると、人口表の一行だった名を別の用途の資料から探し直せます。


人口3,472人は村単独ではない

印刷52頁、表2-3の表題は、Blitta県の小郡別居住人口です。Yéguéの行は男性1,763人、女性1,709人、合計3,472人。出典はINSEED/RGPH-5で、年鑑の方法説明は2022年11月の国勢調査を用いたことを記しています。

印刷43頁の表1-38にも同じ値がありますが、こちらも小郡別です。二つの表で一致していても、村単独の人口に変わるわけではありません。ANIDで同名小郡に複数の集落が確認できることからも、数字に付く範囲を省けません。

したがって本稿の人口は2022年のYégué小郡全域です。Yégué村だけの人口と、2026年現在の人口は未確認とします。


座標では川と集落を区別する

回収済みGeoNamesのトーゴ地名データには、Yégué、識別子2363353、種別PPLという集落点があり、北緯8.18333度・東経0.65度を記しています。県図の西側という位置、所属資料の地名と合わせて、本稿の暫定索引点に使います。

同じデータには、識別子2363352のYégué、種別STMもあります。こちらは河川で、北緯8.06667度の別の点です。同名だからといって、川の座標を村へ移すことはしません。

集落レコードの更新日は2020年6月10日ですが、測量日ではありません。別名欄のJegeも公式の改称履歴とは扱いません。人口欄の0は未収録として扱います。公式村中心や境界との一致は未照合で、小数点以下の桁数を位置精度の保証にもしません。

トーゴの首都は外務省基礎データが記すロメです。Yéguéは国の首都ではありません。


歴史表記と日本語への転写

今回原本で確認した地名形はYéguéとYEGUEです。日本語の歴史的漢字形や、定着した公的カタカナ形は確認できませんでした。中国大陸・台湾の公的漢字形も未確認です。過去に用例が存在しなかったと断定するものではありません。

イェゲは本誌の暫定転写です。フランス語の綴りを手掛かりに、冒頭Yéをイェ、後半guéをゲへ近似させます。OQLFの解説では、半母音[j]と母音[i]は近い調音を持ちますが、同じ音としては扱われません。またフランス語の母音には[e]と[ɛ]などの区別があります。日本語のエ一つでその差まで保存することはできません。

同局の綴りと発音の解説は、guがéなどに先行する場合、一般に[g]となることも示しています。後半をグエでなくゲに近似する際の参考です。これも現地での読みを確認した資料とは分けます。

ただし、これらはフランス語一般の音声資料であり、Yéguéという現地地名の発音記録ではありません。現地音源は未取得・未聴取です。 冒頭が実際にどのような音で発音されるか、現地語の正書法、母音の長短、声調は未確認です。欧文のアクセント記号を、そのまま現地語の声調記号とも読みません。

イェゲを既存日本語名として紹介せず、Yéguéを併記して対象を示します。現地音を確認できれば、カタカナ形から見直す余地を残します。


二文字・三文字案の比較

以下はいずれも本誌の新しい比較案で、史料掲載形ではありません。各字の読みは文化庁の常用漢字表音訓索引で確認します。

意恵下

意のイ、恵のエ、下のゲを使う三字案です。通常の字音を順に並べるとイエゲであり、イェゲと自動的に同じになるわけではありません。本稿では意恵の二字をイェに対応させる指定を添え、**意恵下(イェゲ)**とします。

イからエへ移る手掛かりを二字に分け、末尾ゲも一字で残せる点を評価します。冒頭の二字を一つの音節にまとめることは本誌の約束で、現地音の再現を実証したものではありません。「意」「恵」「下」の字義を村の精神性や地形の説明に使いません。

依恵下

依にもイがあるため、同じ組合せができます。ただし索引には依のエも載ります。意恵下も読み指定は必要ですが、最初の字をイとして示す今回の比較では、意の方を選びます。依恵下が音声的に劣る、あるいは歴史的に誤りだという判断ではありません。

恵下

二字案は字音ではエゲです。恵だけにイェという指定を負わせると、冒頭のイに相当する手掛かりが字面からなくなります。二字に収めるためにその要素を落とす必要はないと考え、今回は三字を採ります。

三案とも、日本語の暫定転写に対応させる当て字です。読者が漢字だけから読みを一意に復元できるとはせず、読みを併記します。


万国漢字志の暫定案

暫定日本語都市名
イェゲ

原綴り・所属国
Yégué/トーゴ

暫定制定都市名
意恵下(イェゲ)――創

制定状態
暫定制定・原典継続調査

意恵にイェという読み指定を添える三字案です。地名の翻訳や歴史的漢字名の復元ではありません。一字略称と命名者は設けません。


採らなかった表記と未解決点

依恵下は同じ音を意図する比較案として残し、恵下は冒頭の手掛かりを省くため採りませんでした。採用案にもイエとイェの隔たりは残ります。

村単独の人口、公式村中心と境界、語源、命名者、現地発音、日本語と中国語圏の先行用例は要継続調査です。検索で候補になった1949年官報のYéguéは該当原頁と観測地点の同一性を確認できていないため、本稿の歴史用例には加えません。

人口表の同名区域、道路の経由地、地名データの集落と河川。それぞれが指すものを分けたうえで、一つの村の表記を提案します。


参考資料

(2026年10月19日調査。現地音源未聴取。)


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第百二十九号

国道27号のもう一つの地名Langabouと、既刊から残るMô県の集落候補を比較します。道路の名称だけで位置を決めず、集落・行政区域・同名地物の対応を確かめて選びます。